花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
「ずいき祭のしつらえ」Vol.17 / October 28, 2021
四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。
「ずいき祭のしつらえ」
胡麻酢和え、ずいきと揚げの炊いたん、白和えなど、夏から秋にかけて料亭でも家庭の食卓にもたびたび上るのがずいき。赤ずいき、白ずいき、青ずいきと3種があり、しゃくしゃくとした食感が独特。けっして派手ではないけれど京都では欠かせない野菜が年に一度だけ主役に躍り出る。それが北野天満宮のずいき祭だ。
ずいき祭は菅原道真公が太宰府で彫り上げた木像を祀り、その年に収穫された穀物や野菜を供えて五穀豊穣を感謝したのが始まりとされる秋祭り。5日間にわたって繰り広げられ、ずいきで屋根を葺いた大小2基のずいき神輿で広く知られる。赤ずいきを外側に、白ずいきを内側に葺いた2層の屋根を持ち、赤茄子や唐辛子、白胡麻、九条葱の種、柚子などその年の収穫物で彩られた神輿は、まさに豊かな実りを象徴するもの。新鮮な作物を材料にするだけに、神輿は毎年新調。北野天満宮の御旅所に飾られ、10月4日の還幸祭に巡行する様子を心待ちにする人々も多い。
神に供えるという気持ちに寄り添うように、すっと伸びた赤ずいきをまっすぐに生けたのが〈みたて〉流、ずいき祭のあしらい。赤ずいきの皮の中にも緑の色が混じり、なんともいえない茎の色合いを際立たせるため、余計な手は加えずシンプルに。花器に見立てたのは、南山城村で作陶する清水善行の鉄鉢。須恵器ならではの深い色合いがまた、ずいきを引き立てている。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2016年11月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。