真似をしたくなる、サンドイッチ

カレー風味がクセになる!パリのカフェ『フィカ』で食べたい、ローストビーフのオープンサンド。March 17, 2026

サンドイッチをこよなく愛するパリ在住の文筆家、川村明子さん。『&Premium』本誌の連載「パリのサンドイッチ調査隊」では、パリ中のサンドイッチを紹介しています。
ここでは、本誌で語り切れなかった連載のこぼれ話をお届け。No61となる今回は、本誌No148に登場した『フィカ』で惜しくも紹介できなかったサンドイッチの話を。

川村さんによるスケッチでスタート。今回は北欧の香りが漂う、オープンサンドを3つ紹介します! サンドイッチ 川村明子 スケッチ
川村さんによるスケッチでスタート。今回は北欧の香りが漂う、オープンサンドを3つ紹介します!

サンドイッチの連載を、こんなに楽しく続けられているのは。

ひとえに、発見が尽きないからだと思う。特にパリは、さまざまな国にルーツのある人々が暮らす街ゆえ、いろいろなスタイルのサンドイッチに出合える。主たる具材は馴染みあるものでも、脇役となる具との組み合わせや、合わせるソース、ちょっとした味付けにそれぞれの国や地域の味を思い起こすことが少なくない。

久しぶりに文化センター『スウェーデン・インスティチュート』内にあるカフェ『フィカ』を訪れたときもそうだった。ショーケースに並んだオープンサンドを見てデンマークのコペンハーゲンで食べたサンドイッチを思い出した。コペンハーゲンにはオープンサンドの専門店が何軒かあって、フードコートにスタンドを構えた店では、ショーケースにずらりとオープンサンドが勢揃いしていた。品数でいったら、日本のおにぎり屋さんと同じくらいあったのではないかと思う。選ぶのが楽しくて、出発間際の空港でもオープンサンドを食べたくらい。スウェーデンにはまだ行ったことがないのだけれど、具材から察するに共通した要素が多いにありそうだ。

カフェ『フィカ』では、以前よく友人と待ち合わせをしていた。

決まってランチタイム後のお茶の時間で、シナモンやクローブの合わさったような匂いがどこかから漂ってきては、「なんだか北欧っぽいな〜」と思っていた。その頃は北欧を訪れた経験がなかったから、ショーケースを見て、たとえオープンサンドを見つけても、いまのように彼の地で食べた味を思い出すには至らなかったはずだ。

『フィカ』に並ぶ、カルダモンを練り込んだパン生地を使ったスウェーデンのお菓子、セムラ。大小2つのサイズ。上の段に見えるミニサンドは朝食タイムから食べられる。
『フィカ』に並ぶ、カルダモンを練り込んだパン生地を使ったスウェーデンのお菓子、セムラ。大小2つのサイズ。上の段に見えるミニサンドは朝食タイムから食べられる。
この小エビのオープンサンドを見ると、北欧っぽい!と思うのは私だけだろうか……。いつもメニューには魚介を具にしたオープンサンド (タルティーヌ) が一つはある。 | この小エビのオープンサンドを見ると、北欧っぽい!と思うのは私だけだろうか......。いつもメニューには魚介を具にしたオープンサンド(メニューではタルティーヌと記載。意味は同じ)が一つはある。
この小エビのオープンサンドを見ると、北欧っぽい!と思うのは私だけだろうか......。いつもメニューには魚介を具にしたオープンサンド(メニューではタルティーヌと記載。意味は同じ)が一つはある。

去年、イラストレーターのイザベル・ボワノさんが出演する&Premiumの撮影で、しばらくぶりに『フィカ』へ行くことになった。それが朝だったことがきっかけで、午前中の静かな時間に改めて再訪したくなった。そのままランチもするつもりで出かけると、11時を過ぎてショーケースに並び始めたオープンサンドの一つに、おぉ!と目が惹きつけられた。黒パンにニシンが盛られている。迷わずそれにした。食べてみて、「そうだった、そうだった!甘いんだった!」と思い出した。酸っぱさよりも甘さが優っていると感じるニシンのマリネにディルが香り、ボソボソした黒パンがよく合う。これがもし、しっとりしたパンだったら、全体的にもったりした印象になるのではないかと思う。東南アジアやインド料理を日本の白米で食べるような。

再訪してみると......。

一気に、旅行したい気分が高まって、それに、もう一度確かめたいような気もして、ニシンサンドを目当てに日を置かずに再訪したら、メニューが新しくなっていて、ニシンの代わりにスモークトラウト(燻製した鱒)が登場していた。スモークトラウトでもスモークサーモンでも、相棒はアボカドのことが多いと思う。それが『フィカ』ではスウェーデンのチーズ、ヴェステルボッテンと生クリームを加えたオムレツとのコンビで、多いに心が躍った。

ニシンのタルティーヌ。鯖寿司が好きな人は、好きなんじゃないかなぁ。ニシンの下に見える白いものはじゃがいも。 川村明子 サンドイッチ
ニシンのタルティーヌ。鯖寿司が好きな人は、好きなんじゃないかなぁ。ニシンの下に見える白いものはじゃがいも。

セロリとりんご、玉ねぎを小さな角切りにして加えたレムラードソース(マヨネーズにマスタードや胡椒を加え伸ばしたもの)とたっぷりの葉野菜も盛られ、サラダがパンにのっている感じだ。この、ヴェステルボッテン入りのオムレツが、どうにも懐かしい味で、もっと食べてみたくなった。なめらかでちょっとつるんとしてとても食べやすい舌触り。食べたことがある味のような気がして記憶を探った結果、「あー、たぶんオードブル詰め合わせなんかに入っている魚のテリーヌと似てるんだ!」と辿り着き、魚介のすり身が入っているのかもと思ったが、材料を聞いたら、入っていなかった。うまみが効いていたのはチーズだろうか。ヴェステルボッテンというチーズも食べてみたい。

本誌で紹介したスモークトラウトのオープンサンド。チーズ入りオムレツは型に入れてオーブンで焼くそう。チーズの塩梅もポイントな気がした。真似て作ってみたい。
本誌で紹介したスモークトラウトのオープンサンド。チーズ入りオムレツは型に入れてオーブンで焼くそう。チーズの塩梅もポイントな気がした。真似て作ってみたい。
横からの図。サラダが本当に盛りだくさんなんです。パン自体は小ぶりなサイズだけれど、ちゃんとおなかいっぱいになる。
横からの図。サラダが本当に盛りだくさんなんです。パン自体は小ぶりなサイズだけれど、ちゃんとおなかいっぱいになる。

続いては、ローストビーフのオープンサンド。

トラウトと同時に登場したローストビーフのオープンサンド(店のメニューにはフランス語で"タルティーヌ"と表記)も黄色いソースが気になって頼んでみた。測ったわけではないけれど、これも、トレビスやレタスがこんもりで、高さが10cm近くあったと思う。ドレッシングはかかっておらず、だから、油っぽくなくて、肉も気前よく盛られているのに、すごくさっぱり。それにはライ麦パンの存在も大きいのだろう。

サンドイッチ 川村明子

無塩バターがのばしてあるものの、パンの表面が乾かない程度で、体が健やかになりそうなサンドイッチだ。気になっていたソースは、カレー風味だった。加えて、甘酸っぱい。カレー風味で甘酸っぱいと聞くと、言葉だけでは想像しにくいかもしれないが、知るところの味で近いものをあげるなら、チキンナゲットのカレーソースじゃないかなぁ。ローストビーフとライ麦パンに合わせてあるのも、おいしかった。何より、マスタードでもホースラディッシュでもなく、いつもと違ったローストビーフの食べ方が楽しかった。ニシンのマリネもそうだけれど、甘酢の味は、クセになると思う。

『Fika』

11 rue Payennne 75003 Institut Suèdious内 ☎️06-81-66-77-62 8:30〜19:00 月休 タルティーヌはランチメニューとして11時半頃に店頭に出される。ミニサンドもある。
11 rue Payennne 75003 Institut Suèdious内 ☎️06-81-66-77-62 8:30〜19:00 月休 タルティーヌはランチメニューとして11時半頃に店頭に出される。ミニサンドもある。


文筆家 川村 明子

川村明子
パリ在住。本誌にて「パリのサンドイッチ調査隊」連載中。サンドイッチ探求はもはやライフワーク。著書に『パリのパン屋さん』(新潮社)、『日曜日は、プーレ・ロティ』(CCCメディアハウス)などがある。Instagramは@mlleakiko。Podcast「今日のおいしい」も随時更新。朝ごはんブログ再開しました。

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