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毎日をともにする、「結婚のやかん」。写真と文:古賀及子 (エッセイスト) #4October 29, 2025
私の家には「結婚のやかん」がある。
友人の結婚式に出席した際、引き出物でもらったカタログギフトから選んだもの。だから「結婚のやかん」だ。中の水が沸騰するとピーっと鳴る、笛吹きのついたごくシンプルなステンレスのやかん。その時に結婚した友人の子が、今年中学校に上がったというから、使い続けてもうずいぶん経つ。

カタログから何を取り寄せるか選ぶ際、せっかくの友人の結婚記念だから、残るものにしようと考えた。魅力的なお菓子や飲み物、ブランドのお米などもあったけれど、いわゆる“消え物”ではないものにしようと。当時、家にやかんがなく、雪平鍋でお湯を沸かしていたので、それで決めたのだと思う。友情からある程度心得て決めたものではあったが、「絶対に後生大切にしよう」とか、ものすごく意気込んだというわけでもなく、ちょうどいいからやかん、くらいの気軽な気持ちでもあった。
で、そこから10年以上経つのだから、道具と人間の関わりの長さは侮れない。
毎朝、ベランダで育てているアボカドの鉢植えに水をやるときに使う。もちろん、お茶を飲むのにもお湯を沸かすのにも使う。いずれにせよ、必ず毎日使う。なにせ、やかんである。一度手にしたら、そうそう壊れないものだから、これからもきっとずっと一緒だろう。
やかんを見るたびに友人を思い出す……なんてことはもはやなく、はっとたまに、「結婚のやかん」と、やかんの本名を思い出して慈しむ。
友人は外国に暮らし、もう何年も会えていないけれど、SNSを通じて近況を共有し合っている。先日は、庭にもぐらが出たそうだ。
edit:Sayuri Otobe
エッセイスト 古賀 及子

こが・ちかこ/1979年東京都生まれ。webメディアの編集者、ライターを経て現職。著書に日記エッセイ『ちょっと踊ったりすぐにかけだす』(素粒社)、エッセイ集『巣鴨のお寿司屋で、帰れと言われたことがある』(幻冬舎)、『好きな食べ物が見つからない』(ポプラ社)などがある。2025年10月下旬に晶文社より、最新刊『私は私に私が日記をつけていることを秘密にしている』を刊行予定。











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