小林エリカの文房具トラベラー
小林エリカの文房具トラベラー vol.09「金銀」&STATIONERY / August 26, 2021
私には鴉の血が流れているのやもしれぬと思うほど、光物の魅力には抗いがたい。金銀キラキラがピカピカが好き。それが例え本物のダイヤモンドでなくたって構わない。私はとにかく輝くものが好きなのよ☆
ひとくちに金や銀といえどもその差は無限大。ちょうどイヌイットが白の種類を事細かに見分けるように、私のような鴉人間は口うるさい。
イソップ物語のガチョウが産む卵のような金色、古墳の中に眠る鏡のような銀色、野原一面に降り注ぐ太陽のような金色、海を泳ぐコハダの背中のような銀色、ほら、夜空を見あげたときの星の色みたいな、そんな色々が欲しいのよ。
しかしながら、光を紙の上に定着させようというのは至難の業だ。輝きをペンやインクなんかの液体で再現しようというのがそもそも無謀というものである。とはいえ、それでもそんな我が果てしない欲望を叶えてくれる筋金入りの文房具たちがこの世には存在するのだ。その精鋭たちの放つ輝きを見るたびに、私はうっとりとその光に吸い込まれそうになる。
edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.10 2014年10月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。
作家・マンガ家 小林 エリカ
シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。