小林エリカの文房具トラベラー
小林エリカの文房具トラベラー vol.07「学習帳/練習帳」&STATIONERY / August 12, 2021
子ども向けの学習帳や練習帳に引かれたアルファベット書き取り用の三本線、淡い紫やブルーで引かれたグリッド。いくら大人になっても、ジャポニカ学習帳やツバメノートに思わずその目を奪われずにはいられないのは、きっと郷愁のせいだけではないはず。
小学校時代の記憶をよみがえらせつつ、旅先のスーパーマーケットの子ども向けの売り場を覗けば、そこには3Dキャラクターやキラキラの表紙の帳面が幾つも並び、華やかなそれらを眺めるのもまた楽し。
思い返せば、かつて学校での勉強が好きじゃなかったのは、強制配布された帳面が好みじゃなかった、という理由からなのではなかろうか。ちょうど遠足が嫌いだったのは、ダサイ体操服姿で街へ出かけなければならないのが屈辱的に思えた如く。子どもだからってなめてはいけない、媚びてもいけない、好みがあるんだ、敏感なのだ。
いまになってようやくわかる。ほら、学習帳が可愛ければ、こんなにも思う存分学習できるわ、練習だってはかどるわ。帳面選びに余念が無い私、もはや三十六歳。
edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.8 2014年8月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。
作家・マンガ家 小林 エリカ
シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。