Music

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/中村智昭 vol.4January 28, 2022

January.28 – February.03, 2022

Saturday Morning

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Title.
Suite Pra Pular Da Cama (e Ver O Brasil)
Artist.
Orquestra Popular De Câmara
2022年最初の月のセレクターにご指名いただいたので、一年のスタートに相応しい鮮度の高いものをと思い2021年の最新リリースにこだわって選盤してきましたが、最終週の2枚はアウトロ的にオールタイム・フェイバリットを。実は「土曜の朝の音楽」というテーマに対して最初に連想したのが本作で、何しろ邦題がその名も「ベッドから飛び降りてブラジルを見るための組曲」。制作されたのは1998年、僕が日本国内盤で初めて聴いたのは2000年頃。その後しばらくして書いた紹介文に「ブラジリアン・アコースティックのネクスト・レヴェル」という表現を使ったことがあるけれど、時を経て今こうして改めて聴いてもやはり同様の感想を抱いてしまう。ここにあるのは驚くほど高い次元で交錯する技術と想像性、そして培われたリズムの完璧なる融合。ベンジャミン・タウブキン、ホーネン・アウトマン、トニーニョ・フェラグッチら当時の気鋭新世代と、パット・メセニー・グループへの参加などでも知られた伝説のパーカッショニスト、ナナ・ヴァスコンセロス等による奇跡のセッション。トータルは16分27秒。こんなにも壮大で美しく、冒険に満ちた楽曲を僕は他に知らない。
アルバム『Orquestra Popular De Câmara』収録。

Sunday Night

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Title.
Inside A Silent Tear
Artist.
Blossom Dearie
昨年秋の&Premium 97「静かに過ごす時間が、必要です。」号のブックインブック「週末を静かに過ごすための音楽」に参加させていただいた際に、「ホットワインを飲みながら聴くジャズ・バラードを二枚紹介してください」というオーダーが編集の方からありました。当初は大好きなブロッサム・ディアリーの本ライヴ・アルバムを選ぶつもりだったのですが、調べてみるとiTunesやSpotifyといったサブスクリプションで聴けないことが判明したため、他の作品にすることに。しかしながらこれ以上のレコードもないと未だに思っているので、この機会に紹介させてください。1984年4月、ニューヨークでピアノとヴォーカルのみで実況録音されたもので、小さな会場なのかオーディエンスとの距離感もいい。普段より少し綺麗な服を着て、日曜の夜にこんな親密な雰囲気の彼女の演奏会に出かけられたら、どんなに素敵だろう。中でもB面の4曲目「Inside A Silent Tear」が個人的にはハイライトで、この上なくキュートな歌声の「ラララ」は、演奏が終わっても脳内で何度もリフレインしてしまう。そのクレジットに目を落とすと、自作曲であるという。本当に素晴らしい音楽家だと思う。
アルバム『Et Tu Bruce, Volume VIII』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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MUSICAÄNOSSA / Bar Music Shibuya,Tokyo 中村智昭

1977年広島生まれ。DJ/選曲家として「ムジカノッサ」を主宰、渋谷「バー・ミュージック」店主。ユニバーサル/ビクター/インパートメント/キング/コアポート/ディスクユニオンより複数枚のコンピレイションCDをリリース、ディスクガイドの企画・監修も手掛けると共にUSENやFM各局にも選曲を提供。ジョン・コルトレーンのトリビュート・コ ンピレイション『Dear J.C.』(ユニバーサル)、ベニー・シングス『The Best Of Benny Sings』(ビクター)のライナーノーツや、「Latina」誌、HMV発行の「Quiet Corner」、リットーミュージック「Jazz Next Standerd」シリーズへの寄稿など。CALMベスト・アルバム『Mellowdies for Memories』(ラストラム)の選曲とその解説も担当している。また、渋谷「カフェ・アプレミディ」にて1999年のオープンから2009年までの10年間店長も務めた。2010年渋谷に「バー・ミュージック」をオープン。2013年にはレーベル「ムジカノッサ・グリプス」をスタート。近年はスモール・サークル・オブ・フレンズ/STUDIO75とのコラボレーションも活発化している。晩年のテリー・キャリアーのCDオンリー音源から厳選し世界初ヴァイナル化した『Tokyo Moon』や、コンピレーションCD+7”EP『Bar Music』シリーズも好評。最新作は『Bar Music × CORE PORT Promising Time for 24:00 Later』(コアポート)。


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