Music

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/中村智昭 vol.1January 07, 2022

January.07 – January.13, 2022

Saturday Morning

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Title.
Music
Artist.
Cleo Sol
休日の始まりに、「音楽」を聴く。キャロル・キングやサティマ・ビー・ベンジャミンなど、ミュージシャンが自身の曲のタイトルに「Music」を冠する際の気概のようなものに以前から特に惹かれてきたが、UKのフィメールシンガーであるクレオ・ソル2021年新作のそれもやはり素晴らしい。アレンジから一聴して想起したのはミニー・リパートンの1stアルバム『Come To My Garden』の「Les Fleur」だったが、アナログ盤が到着しアルバム全体を繰り返す中でそのイメージは徐々に変化し、むしろミニー・リパートンなら2ndアルバム『Perfect Angel』の「Lovin’ You」を引き合いにすべきだとも思うようになった。リヴィングのソファーでわが子を抱える彼女の表情は、強くも、優しくもあるように見える。間違いなく20年後の土曜日の朝にも聴いているであろう傑作。
アルバム『Mother』収録。

Sunday Night

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Title.
Reverie op.1
Artist.
Eriko Uegaki
横浜を拠点に活動するピアニストである上柿絵梨子が、パンデミック〜緊急事態宣言発出によって混迷を極めた2020年の春にスタートさせた即興演奏のプロジェクト「Rêverie 日曜日の夢の始まり」。毎週日曜日の夜にYouTubeにアップされた彼女の演奏は、皆が穏やかな夜を過ごせるよう祈りながら、ゆっくりと丁寧に編み込まれたソロ・ピアノだった。ここでは形式上冒頭の「Reverie op.1」を紹介するが、収録された「Reverie op.10」までの全編が組曲的に静寂の夜の音楽として相応しい。2021年1月の本CDリリースからちょうど一年が経った。まだ長いトンネルの出口には至らないが、今こうして文章を綴りながらあらためて聴いても、それはやはり微かな希望の光のように感じる。
アルバム『Reverie 日曜日の夢の始まり』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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MUSICAÄNOSSA / Bar Music Shibuya,Tokyo 中村智昭

1977年広島生まれ。DJ/選曲家として「ムジカノッサ」を主宰、渋谷「バー・ミュージック」店主。ユニバーサル/ビクター/インパートメント/キング/コアポート/ディスクユニオンより複数枚のコンピレイションCDをリリース、ディスクガイドの企画・監修も手掛けると共にUSENやFM各局にも選曲を提供。ジョン・コルトレーンのトリビュート・コ ンピレイション『Dear J.C.』(ユニバーサル)、ベニー・シングス『The Best Of Benny Sings』(ビクター)のライナーノーツや、「Latina」誌、HMV発行の「Quiet Corner」、リットーミュージック「Jazz Next Standerd」シリーズへの寄稿など。CALMベスト・アルバム『Mellowdies for Memories』(ラストラム)の選曲とその解説も担当している。また、渋谷「カフェ・アプレミディ」にて1999年のオープンから2009年までの10年間店長も務めた。2010年渋谷に「バー・ミュージック」をオープン。2013年にはレーベル「ムジカノッサ・グリプス」をスタート。近年はスモール・サークル・オブ・フレンズ/STUDIO75とのコラボレーションも活発化している。晩年のテリー・キャリアーのCDオンリー音源から厳選し世界初ヴァイナル化した『Tokyo Moon』や、コンピレーションCD+7”EP『Bar Music』シリーズも好評。最新作は『Bar Music × CORE PORT Promising Time for 24:00 Later』(コアポート)。


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