MUSIC 心地よい音楽を。

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/冥丁 vol.1June 04, 2021

June.04 – June.10, 2021

Saturday Morning

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Title.
Mood
Artist.
Katya Yonder
ロシアのエカテリンブルクに住む友人のカチャ・ヨンダーさんから届いた新しいアルバム。その中でもこの曲が一番のお気に入りで、「Mood」というタイトルも好きです。部屋でこの曲を流しながら、まだ深い朝のトワイライトに浸るのも良いと思いますよ。
暫く目を閉じて聴いていると、空想の中の不思議な世界へと旅立つことが出来ます。淡光の入る白い部屋から始まり、視界は徐々に霞んでいきます。辺り一面には植物達が生い茂り、遠い日の未来に一人で立っている。土曜日の朝は、そんな想像に耽りながら雨音と共に微睡んでみたい。
爽やかな孤独に包み込まれる一曲だと思いますよ。
アルバム『Multiply Intentions』収録。

Sunday Night

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Title.
The Tunnel
Artist.
Azimuth
日曜日の夕刻、瀬戸内海に架かる街道を通って旅に出かけることがあります。暗がりの車内でこの曲を流しながら、四国へ向かうのが好きなんですよ。六月の夜も聴いてみたいと思いましたね。
この街道の4番目に架かる橋を越えた辺りから、永遠と続く道を進んでいるように思えてきます。車窓から見える外の景色はとても静かで穏やかな表情をしています。
月明かりに照らされた海峡は煌めき、島々が夜空の下で響いています。
橋を渡り、海峡を越え、トンネルをぬける度に、夜は深まっていきます。
そう云えば、この曲を聴いていると宮沢賢治の銀河鉄道の夜を思い出しましたね。
一つの物語がそっと終わっていくかのような、読後感の漂う一曲だと思いますよ。
アルバム『Azimuth / The Touchstone / Départ』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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電子音楽家 / 音楽プロデューサー  冥丁 / MEITEI

日本の文化から徐々に失われつつある、過去の時代の雰囲気を「失日本」と呼び、現代的なサウンドテクニックで日本古来の印象を融合させた私的でコンセプチャルな音楽を生み出す広島在住の作曲家。エレクトロニック、アンビエント、ヒップホップ、エクスペリメンタルを融合させた音楽で、過去と現在の狭間にある音楽芸術を創作している。これまでに『怪談』(Evening Chants)『小町』(Métron Records)『古風』(Part Ⅰ,Ⅱ&Ⅲ)(KITCHEN.LABEL)など、独自の音楽テーマとエネルギーを持った画期的な三部作シリーズを海外の様々なレーベルから発表し、冥丁は世界的にも急速に近年のアンビエント・ミュージックの特異点となった。日本の文化と豊かな歴史の持つ多様性を音楽表現とした発信により、The Wire、Pitchforkから高い評価を受け、MUTEK Barcelona 2020、コロナ禍を経てSWEET LOVE SHOWER SPRING 2022、朝霧JAM 2023などの音楽フェスティバルに出演し、ヨーロッパ、シンガポール、台湾などを含む海外ツアーも成功させる。ソロ活動の傍ら、Cartierや資生堂IPSA、MERRELL、Nike Jordan、HOMME PLISSÉ ISSEY MIYAKEなど世界的なブランドからの依頼を受け、イベントやキャンペーンのためのオリジナル楽曲の制作も担当している。

instagram.com/meitei.japan

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