土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/平松麻 vol.1 | Article | & Premium (アンド プレミアム)

Music

July 02, 2021 土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/平松麻 vol.1

July.02 – July.08, 2021

Saturday Morning

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Title.
レイジー・ボーンズ
Artist.
吉田日出子
オンシアター自由劇場の『上海バンスキング』をシアターコクーンで観たのは、1991年9歳のときだった。昭和10年代から日本の敗戦までの上海を舞台にして、時代に翻弄されるジャズマンたちの青春を描いた伝説的な音楽劇。
舞台空間の艶やかな危うさに、大人の高揚と寂しさが混ざっていくようすは、例えばサーカスよりも刺激的で、私は夢とうつつの境にスコンと落っこちました。
終演後のロビーでも大拍手が続き、役を終えた主演女優の吉田日出子さんに「デコ、おーいデコ、久しぶりだね、よかったよ」と声かける親がキランキランに見えたものです。わたしおとなにいつなれるの? 待てない!と思いながら。
劇中歌の「レイジー・ボーンズ」に、たまらない日本語訳をあてた大人のニクイ感性も憧れてやみません。
アルバム『上海バンスキング』収録。

Sunday Night

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Title.
Steady Grind
Artist.
Victoria Spivey
1920年代を代表する女性ブルースシンガーのひとりヴィクトリア・スピヴィのヤンチャな歌いっぷりに痺れるのが好きだ。
YouTubeで見かけたヴィクトリアはベリーショートで、毛皮のコートを羽織って大玉のイヤリングをつけてピアノを弾き、聴衆をいちいち振り返りながら、眉毛をピクピクいたずらに動かしてウィンク。黒眼をグリンと剝きだすユーモアたっぷりの表情で「TB blues」を歌う。それを見て吹き出す愛らしい顔つきのルイ・アームストロングも映っているし、愉快にかっこいいのでぜひ検索を。
私は24時間365日自由な時間に仕事できるので、日曜といえども夜中からイヤホンでヴィクトリア・スピヴィを聴いて、よし今日は朝5時まで描くかなと決める。「Steady Grind」は、仕事場に積み重なった古本の隙間からあくびみたいな歌が聴こえるような一曲。夜の制作をあくびしながら楽しめるのです。なかなか終わらない日曜の夜。
アルバム『Complete Recorded Works In Chronological Order Volume 1 11 May 1926 To 31 October 1927』収録。




『&Premium』特別編集
『&Music/土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ 』 好評発売中。

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ
音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 小西康陽、青葉市子、七尾旅人、長田佳子、テイ・トウワ、中嶋朋子……、 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付きです。 詳しくはこちら


画家 平松麻

1982年生まれ、東京都出身。油彩画を主として展覧会での作品発表を軸に活動する。2020年6月~2021年末まで、朝日新聞夕刊連載小説、柴田元幸新訳「ガリバー旅行記」の挿絵を担当中。森岡督行『本と店主』(誠文堂新光社)、村上春樹・アンデルセン文学賞受賞の講演テキスト『MONKEY vol.11』(SWITCH PUBLISHING)、穂村弘『きっとあの人は眠っているんだよ 穂村弘の読書日記』(河出書房新社)、三品輝起『雑貨の終わり』(新潮社)など挿画も手掛ける。マッチ箱に絵を描くシリーズ「Things Once Mine かつてここにいたもの」も発表中。
Latest Issueさっと作れる、あの人の手料理。2021.07.19 — 880円