土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/柴田元幸 vol.3 | Music | & Premium (アンド プレミアム)

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Music土曜の朝と日曜の夜の音楽。

May 15, 2020 土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/柴田元幸 vol.3

May.15 – May.21, 2020

Saturday Morning

Title.
I’m Into Something Good
Artist.
The Langley Schools Music Project
1964年、ハーマンズ・ハーミッツのデビューヒットの邦題はズバリ「朝からゴキゲン」。原題は“I’m Into Something Good”(何かいいことありそう)だが、「昨日の夜近所に越してきたステキな女の子に会ってけさは朝からゴキゲン」という中身なので、まさに内容に合った訳題である。なので素直にこのハーマンズ・ハーミッツ・バージョンを聴けばいいのだろうが、たぶんもう500回くらい聴いたのでやや新鮮味に欠ける。なので、この曲をなぜか数十人の小学生集団が歌い、演奏した、だいぶ危なっかしいバージョンで聴く。1976年から77年にかけて、カナダの田舎の小学校の体育館で録音したアルバムThe Langley Schools Music Project: Innocence and Despairから。
アルバム『Innocence and Despair』収録。

Sunday Night

Title.
The Long And Winding Road
Artist.
The Langley Schools Music Project
で、このThe Langley Schools Music Projectを聴く楽しみは、かなり特殊な形態のヘタウマを楽しむことである。下手をするとシンバルの「ジャン!」が一秒くらいズレていたりする。そのなかで、かなりストレートに胸を打つ歌唱があって、それがこの、Joy Jacksonという女の子が歌う「ロング・アンド・ワインディング・ロード」。先生のピアノだけを伴奏に、淡々と、切々と、私をここに待たせないで……と歌う声を聴いていると、アルバムタイトルの「無垢と絶望」にも合点が行く上に、なぜか自分にも無垢な時があったのだと思えてきて、清い気持ちで眠りにつくことができる(理性が割って入ってきて、「お前にゃ関係ねーだろ」と言う前に寝てしまえば、だが)。
アルバム『Innocence and Despair』収録。




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アメリカ文学翻訳者 柴田元幸

アメリカ文学翻訳者、東京大学名誉教授。ポール・オースター、レベッカ・ブラウン、スチュアート・ダイベック、スティーヴン・ミルハウザー、スティーヴ・エリクソンなど、現代アメリカ文学を数多く翻訳。最近の訳書にエリック・マコーマック『雲』(東京創元社)、編著書に『「ハックルベリー・フィンの冒けん」をめぐる冒けん』(研究社)など。文芸誌『MONKEY』責任編集。2017年、早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。