土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/柴田元幸 vol.1 | Music | & Premium (アンド プレミアム)

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Music土曜の朝と日曜の夜の音楽。

May 01, 2020 土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/柴田元幸 vol.1

May.01 – May.07, 2020

Saturday Morning

Title.
Cantata, BWV 147
Artist.
Nikolaus Harnoncourt,Bach
この300年人類が大して進歩しているわけではないことはバッハの音楽を聴けばわかる。バッハならほとんどすべての作品が土曜の朝に聴くのにふさわしいが(例外は不眠症患者の依頼を受けて書かれた『ゴルトベルク変奏曲』か)。まず思いつくのは「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」だが、「お前、タイトルだけで決めてないか」と言われそうなので、これはあえて外す。となると、世界で一番美しいメロディじゃないかとときどき思う、カンタータ147番の第6・10曲のコラール、通称「主よ、人の望みの喜びよ」はどうか。第5曲の「イエスよ、道をつくり給え」も美しいので、第5~6曲でゆっくり目覚めるのがいいかもしれない。
アルバム『Bach Great Cantatas』収録。

Sunday Night

Title.
Precious Joy
Artist.
The Modern Jazz Quartet
というわけでこっちは『ゴルトベルク変奏曲』が順当な選択なのかもしれないが、あれはたしかに誘眠効果はあると思うものの、寝てそのまま鳴らしっぱなしになっているとたとえばグールド1955年版だと第30変奏で急に音がデカくなってギャッと目覚めたりするのでスリープタイマーがないと不適かもしれない。ならばいっそ土曜の朝と同じ曲の夜向き演奏はどうか。夜といえばジャズ。モダン・ジャズ・カルテットの『ブルース・オン・バッハ』には「主よ、人の望みの喜びよ」が“Precious Joy”(かけがえなき喜び)の題で入っている。ハープシコード、ヴィブラフォン、ダブルベース、鈴による手堅いジャズ化。
アルバム『Blues On Bach』収録。




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アメリカ文学翻訳者 柴田元幸

アメリカ文学翻訳者、東京大学名誉教授。ポール・オースター、レベッカ・ブラウン、スチュアート・ダイベック、スティーヴン・ミルハウザー、スティーヴ・エリクソンなど、現代アメリカ文学を数多く翻訳。最近の訳書にエリック・マコーマック『雲』(東京創元社)、編著書に『「ハックルベリー・フィンの冒けん」をめぐる冒けん』(研究社)など。文芸誌『MONKEY』責任編集。2017年、早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。