花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
「満州小あやめ」と骨董。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.71February 22, 2023

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

「満州小あやめ」と骨董。
「いずれあやめか杜若(かきつばた)」。とりわけ美しい女性に対して、どちらが優れているか優劣つけがたいという言葉があるように、あやめや杜若はとても似ている。いずれもすっと伸びた緑の葉に紫の花が咲く様は凛として美しく、初夏の京都を彩る花だ。見分け方にはいくつかあり、花びらの付け根に網目状の模様があるものがあやめ、白い筋があれば杜若、黄色の模様なら花菖蒲(しょうぶ)。育つ場所も違っており、あやめは乾いた草原に、杜若は池や沼などの水中に、花菖蒲は水辺に咲く。
京都にも名所は多く上賀茂神社の摂社、大田神社には杜若が群生。あやめは梅宮大社の境内で目にすることができる。平安神宮の西神苑では5月に咲くあやめを皮切りに、杜若、花菖蒲と続き、なかでも6月上旬から半ばにかけて白虎池池畔に約200種類、約2000株が咲く花菖蒲は圧巻。池に架かる八つ橋とともにある景色は、花は違えど尾形光琳の八橋図屏風を思わせる眺め。
『みたて』があえて小ぶりな満州小あやめを使ったなげいれ。18世紀のフランスで作られた、調味料のクルエット(受け皿)に根付きのものをいけて石で留め、足元に朽ち葉を添えた。黒壁の前に置くことで葉の輪郭が際立ち、可憐な花が浮かびあがる。初夏の空気を運ぶあしらいだ。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2021年7月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。
























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