花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
素朴さが愛らしい「つくり花」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.46July 07, 2022
四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。
素朴さが愛らしい「つくり花」。
毎年3月に始まる上七軒の北野をどりを皮切りに、祇園甲部の都をどり、宮川町の京おどりと続き、5月の先斗町の鴨川をどりまで。4つの花街で繰り広げられる踊りは、京都に春を告げる風物詩。芸舞妓が華麗に彩る舞台はもちろんのこと、装って観劇へと足を運ぶ人々が行き交う街も、なんとはなしに華やかで心が沸き立つ。そして観劇の際にもうひとつ加わる楽しみが、舞台の前に、もてなしを受ける茶席で使われる菓子皿だ。団子が描かれた都をどりの団子皿や、鴨川を写したような水色の鴨川をどりの皿など、デザインは踊りごとに異なり、時代によっても移り変わる。これは持ち帰ってもいい土産の品。菓子をのせれば春の京都を思い出す、そんな存在となっている。
北野をどりの皿は、白い生地の一部に色の釉薬がのせられたデザイン。いつの頃から使われているか定かではないものの、モダンさが漂う意匠だ。全部揃えば青・緑・黄・黒・茶の5色があるうち、「みたて」があしらいに取り入れたのは緑の皿。2枚並べて流れるようなラインを山の稜線に見立てた。散らしたのは梅と桜のつくり花。花びらの一枚、蕊(しべ)の一本まで細やかに仕上げた花は、生花とは違う素朴さと可憐さを持つ。山に見立て、花に見立て。可愛らしい春の野山を愛でたい。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2019年5月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。