花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
終わりと始まりの「縁日」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.43April 28, 2022
四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。
終わりと始まりの「縁日」。
京都の二大縁日といえば東寺で開かれる弘法さんと、北野天満宮で開かれる天神さん。東寺にゆかりの深い弘法大師の命日が3月21日であり、北野天満宮の御祭神・菅原道真公の命日が2月25日であることから、それぞれ毎月21日と25日に多くの人が参拝し、それにあわせて屋台などが出て賑わうようになったのが始まりとされる。とりわけ毎年12月に開かれる縁日は「終い弘法」「終い天神」と呼ばれ、賑わうことこのうえない。しめ縄や干支の置物など、ずらりと並ぶ迎春用品を求める人でごった返すのだ。年が開けて1月になると、今度は「初弘法」「初天神」と呼ばれる縁日が開かれる。一年の始まりだけに、こちらも盛大。締めくくりの12月と、口開けの1月はどちらも縁日好きの心をくすぐるものとなっている。
年末年始の京都をイメージした『みたて』のあしらいは、「終い天神」で手に入れた小さな盃が主役。よく見れば3羽の鶴が繊細に描かれている。屠蘇(とそ)を飲むのにもふさわしい柄だ。中に生けたのは根引き松。根がついたままの松は門松の原型であり、現在も京都では松飾りの主流でもある。和紙を巻いて紅白の水引を掛け、門に向かって右には雄松、左に雌松を飾り、歳神を迎える目印とする根引き松。鶴と松とで、めでたさもひときわ。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2019年2月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。