花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」

春告げる植え込みの「節分草」。花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 Vol.44June 23, 2022

花屋<みたて>に習う植物と歳時記 折々に見立てる 京の暮らし

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

春告げる植え込みの「節分草」。 みたて

春告げる植え込みの「節分草」。

 京都の節分といえば吉田神社や壬生寺の名があがるのには理由がある。節分には邪気=鬼が生じることから、京都御所の鬼門を護る寺社へ参り、邪気を払い福を招くのだ。北東にある表鬼門の吉田神社、南東の伏見稲荷大社もしくは八坂神社、南西で裏鬼門の壬生寺、北西の北野天満宮。吉田神社に現れ追われた鬼は、北野天満宮で末社に閉じ込められるという。この4社へ参ることを四方(よも)参りといい、千年もの昔から受け継がれている。
 もうひとつほかの街にない風習といえば、節分のお化け。江戸時代末期に始まったとされるお化けは子どもが大人の格好をする、女性が男装するなどして普段とは異なる姿になることで鬼をやり過ごす、厄払いの行事。町衆から始まった風習とされ、祇園などの花街では今も残る風習。節分に花街を歩けば、凝った仮装のまま次の座敷へと向かう芸舞妓の姿を目にするに違いない。
 そんな節分の頃に花を咲かせることから名がつけられた節分草。陶芸家・清水善行の焼き締めの素朴な器に苔と共に生けた植え込みは、黒と緑の色合いが白い小花を際立たせる。京都にとって2月は寒さがもっとも厳しい頃。とはいえ節分が終われば翌日は立春。春の訪れを告げる花を愛でながら、本格的にやって来る春を待ちたい。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2019年3月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。

hanaya-mitate.com

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