花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
「おもだかの盛り物」Vol.27 / January 06, 2022
四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。
「おもだかの盛り物」
7月のひと月続いた祇園祭が終われば、そろそろお盆の用意が始まる京都。サンスクリット語を語源に持ち、正しくは盂蘭盆会(うらぼんえ)というお盆は8月13日から始まり、16日の五山の送り火で終わる。それに先駆け7日から10日まで、精霊を迎えるために六道まいりとして六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)を参詣するのも、お盆に欠かせない大切な行事だ。
宗派によって多少の違いはあるものの、「もりもの百味」として家に帰ってきた精霊に供える菓子が菓子屋の店頭を飾るのもまた、風物詩のひとつ。前日12日はおけそくとも呼ばれる白餅にお迎えだんご、はす菓子。15日は白餅と送りだんご、白むしといった具合に5日間の予定が張り出される。その様子は、街全体で精霊を迎える準備をしているようにも思え、いかにも京都を感じさせる光景となっている。盛り物をイメージし、漆の盆におもだかを飾ったのが『みたて』盛夏のあしらい。矢じりのような葉が特徴のおもだかは、花くわいとも呼ばれるくわいの原種。球根を見せて飾ることでくわいを思わせ、その丸い形から「もりもの百味」の白餅を連想させる。おもだかに白い小さな花が咲くのも、お盆の頃。葉だけの凛とした姿も、可愛らしい花が顔をのぞかせても、共に美しい。夏の暑さをひととき忘れる佇まいだ。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2017年9月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。