花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
野を写す「つくばねの花束」。Vol.20 / November 18, 2021
四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。
野を写す「つくばねの花束」。
丸い実から4枚の葉がぴょんぴょんと飛び出す姿が羽根つきの羽根のようと、その名が付いたつくばね。新年の茶会では椿と共に飾られるのがおきまりの茶花でもあり、塩漬けにしたものは新春の料理に彩りとして添えられることもある。1月に使われる、縁起のよい野の植物だ。
『みたて』ではヒノキの葉と合わせて和紙でくるりと包み、ごくミニマムな花束に仕立てた。つくばねがヒノキやモミなど針葉樹に寄生して育つことからイメージしたその組み合わせは、まるで野山の景色をそっと切り取ったよう。つくばねの茶色とヒノキの緑、そして和紙の白。けっして派手さはないものの、さりげなくめでたさを漂わせていて、新年にこそふさわしい花束となっている。控えめさゆえ松の内を過ぎてもなお、飾っていても自然と空間に溶け込み、馴染んで違和感がないのもまた魅力でもある。
とはいえ、つくばねは自然のまま枯れてゆけばこの姿になるのではない。まだ葉が青いうちから枝を切り、逆さに吊るすことでピンと飛び出す羽根のような葉の形が保たれる。暑さの残る秋の頃に、新年を思い描いてする準備。つくばねに限らずそんな日々の積み重ね、繰り返しが京都の折々の歳時記を演出しているのだと思わせる。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2017年2月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。