花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
深まる秋の「実ものアレンジ」。Vol.19 / November 11, 2021
四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。
深まる秋の「実ものアレンジ」。
真夏には可憐な白い花を咲かせ、朝晩がひんやりし始める頃には白や緑の小さな実をつけるスズメウリ。野山のあちこちで見かけるツル科の植物を巻いて、さりげないリースに仕立てたものは、秋から冬にかけての〈みたて〉のアレンジのひとつ。細いツルを幾重にも巻くことで鳥の巣のような温もりある雰囲気が生まれ、そこに鮮やかな朱色のカラスウリを合わせた。
名前の由来はぽってりとしたカラスウリに対して小さな実であるからとも、実がスズメの卵のようであるからともいわれるスズメウリ。とはいえカラスウリの名は、かつて唐から伝わった朱墨・唐朱が由来ともいわれる。唐朱の原料の鉱石が鮮やかな朱色で、形も似ているのだ。
スズメウリやカラスウリをはじめ、ツルウメモドキやアケビなどツル科の植物が実をつける秋。しなやかな茎は曲げることもたやすく、くるりと丸めて絡めれば、たちまちリースが完成する。肩肘張らず、秋の気配を部屋の中へ運んでくれるような存在だ。鴨川上流の賀茂川や高野川の川べり、吉田山や大文字山、郊外の大原など街中からそう遠くない自然の中を歩けば様々な実ものに出合うこともできるのが京都。自分だけのリースを作るための野山歩きも楽しい秋の頃だ。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2017年1月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。