花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
「炉開きのあしらい」Vol.18 / November 04, 2021

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

「炉開きのあしらい」
炉開きは亥の月の最初の亥の日に、囲炉裏の炉を開き冬の始まりを告げる行事。口切りは茶壺に入れて夏を越し熟成させた、その年の新茶の封を切ること。重要でめでたい二つの行事が行われる11月は、新しい1年の始まり。茶人にとっての正月ともいわれる大切な月だ。
古くから炉開きには織部(おりべ)・伊部(いんべ)・瓢(ふくべ)の三部(さんべ)を取り合わせるのがよいとされ、織部焼の香合、伊部焼(備前焼の別名)の水指(みずさし)、瓢(瓢箪のこと)の炭斗(すみとり/炉にくべる炭を入れる器)を使うことが多いことから、あしらいの主役に三部のひとつ、瓢箪の花器を選んだ〈みたて〉。骨董市で手に入れたという花器は、自然がもたらす造形美そのもの。そこに生けたのは、茶事では本来飾られないやぶきた。普段は茶葉へと栄養を行き渡らせるため、花を咲かせることのない茶の木。日を追うごとに白い花が咲いてゆく姿もまた趣のあるものと、小さなつぼみと実のある枝を選んだ。茶の木と瓢箪で炉開きを切り取った初冬のあしらい。
老舗茶舗でも手に入れることのできる熟成させた茶葉。共に味わいたいのは、炉開きでも使われる亥の子餅。亥の子ども、うりぼうを思わせるころっと丸い形で、小豆やニッキなど穀物を使った餅は、亥の月、亥の日、亥の刻に餅を食べて無病息災を祈るという中国の故事に基づいたもの。
色づき始める木々もあり、日々秋が深まる11月の京都。目でも舌でも味わいたい風情だ。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2016年12月号より。















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