厄を払う「石菖の寄せ植え」。 – Vol.11 | 花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」 | & Premium (アンド プレミアム)

花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」

Vol.11 / September 16, 2021 厄を払う「石菖の寄せ植え」。

花屋<みたて>に習う植物と歳時記 折々に見立てる 京の暮らし
 

四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。

 
厄を払う「石菖の寄せ植え」。

厄を払う「石菖の寄せ植え」。

 黄色い斑入りの朧月石菖(おぼろづきせきしょう)と丈の短い姫石菖。2種の石菖を苔と共に陶片に植え込んだのが、端午の節句の寄せ植え。あえて花は使わず、緑だけでまとめた。濃い緑の苔からすっくと葉が伸びる様子は、はつらつとして凛々しく、いかにも男の子の節句にふさわしい姿だ。
 かつて中国では端午の節句に邪気を払うため、菖蒲と呼ばれていた石菖を魔除けに用いたり、菖蒲酒として飲んでいた。葉は腹痛に、根は胃薬や解熱などと、薬草としても使われたという。平安時代に節句の行事として伝わった当時の日本には石菖がなく、似た効果のあやめ草(葉菖蒲)を菖蒲として代用。後に中国の菖蒲が日本へと入って来た際には、新たに石菖と名付けられた。この歴史を紐解き、あえて〈みたて〉では端午の飾りに石菖を選んだ。陶片も平安時代のものを選び、ひそかに当時へと思いを馳せる仕掛けになっている。
〈上賀茂神社〉では毎年5月5日、賀茂競馬(かもくらべうま)と呼ばれる競馬会神事(くらべうまえしんじ)が行われる。寛治7(1093)年、宮中の節会の儀式を移して以来続く端午の節句の神事だ。一連の神事の中には、菖蒲の根を比べる宮中での遊びも含まれていて、節句と菖蒲の深いつながりも伝えてくれている。
 5月に入る頃、〈みたて〉には、葉菖蒲とよもぎを軒に飾り魔除け火除けを祈る軒菖蒲(のきしょうぶ)という風習のための小さな花束も並ぶ。こちらは玄関でさりげなく厄を除けてくれる飾りとなるのだ。

photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2016年5月号より。


花屋 みたて

和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。

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