花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
花見を持ち帰る「桜の花束」。Vol.10 / September 09, 2021
四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。
花見を持ち帰る「桜の花束」。
「都をどりは、よーいやさー」の掛け声で幕を開ける都をどりで、京都は春本番を迎える。花街のひとつ、祇園甲部の芸舞妓による舞台はチェリーダンスとも呼ばれ、華やかな舞で都絵巻の世界へと運んでくれる春の風物詩だ。鮮やかなブルーの衣装にも桜が描かれ、舞台の上はまさに春爛漫。
賀茂川沿いに八重紅しだれ桜の並木が続く半木(ながらぎ)の道、山全体がやわらかな桜色に染まる嵐山、〈平野神社〉や〈醍醐寺〉〈仁和寺〉など桜で知られる寺社も数多く、3月から4月は様々に桜を愛でることができるのが京都の魅力だ。
といっても京都に暮らせば、名所へわざわざ足を運ぶより、日々の生活の中にある姿こそ桜。街のあちらこちらに桜が咲き誇り、意識せずに花見を楽しめるのが醍醐味の街でもある。
〈みたて〉では花見をそのまま家に持ち帰る気持ちでと、桜を花束に仕立てる。紙に6つの穴を開けて紐を通すことで、ふんわりと桜を包みながらもしっかりと固定。そのまま飾っておきたくなるような美しい姿とした。桜を包む紙と紐は、桜の樹皮で少しずつ異なる色合いに染めたものを使い、重ねて桜の魅力を伝えてくれるよう。
蕾が膨らむことで木がほんのりピンクに色づき、ぽっと花が咲けば途端にあたりを春色に染める桜を思わせるよう、あえて他の植物は合わせずシンプルに仕上げた花束。生ければ一輪ずつ蕾が膨らみ、花が開く様子を間近に見ることが喜びとなる。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2016年4月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。