5 人の料理家が選ぶ、愛用の台所道具55
〈casalinghi〉のキッチンクロス。渡辺康啓さんの愛用する台所道具①January 24, 2024
置いてあるだけでも気分がいい、つくりの美しいもの。
2007年から料理家として活動する渡辺康啓さん。イタリアで出合った味を再現し、そのおいしさを届ける料理教室が好評で、2015年からは拠点を福岡に移し、一昨年東京に戻ってきた。2 か月前に引っ越したばかりの自宅は、L字型のキッチンが印象的。
「ものを捨てられない性分なので、料理家人生で出合ったほとんどのものがここにあります。意外と少ないですか? 実は友達に驚かれるほど、滅多にものを買わないんです」
ものを見る目は現実的。迷いながら買うことはないという渡辺さんにとって〝いい道具〞とは?
「自分で使っているところが想像できるもの。そして、使わずに置いてあっても美しさを感じるものを選びます。しまいこむと使わなくなるので」
長い間、イタリア料理を作ることが多かったが、実は福岡に住み始めた頃から、和食を作る機会も増えた。日本作家の器の多くは福岡在住時代に手に入れたもの。自分が食べたい料理に合わせて柔軟に道
具を見直す。それが料理を楽しく、快適にするためのポイントだそう。また、気に入って手に入れた道具は、美しい見た目だけではなく、日々使っているうちに新たな良さを発見することもあるという。
「小ぶりの両口雪平鍋を使い始めたらすごく便利で、最近別のメーカーの雪平鍋を追加しました。2 つ比べて使うと違いがわかって面白いんです。口が浅いほうが洗いやすくて便利だなとか、ハンドルがねじ
留めか釘留めかで持つときの感覚が変わるんだなとか、いろんな発見があります。そういった小さな気づきを料理好きの友達とシェアすることも。〝わかる!〞と共感しあったり、人それぞれ好きなポイントがあったりして、そういう時間も楽しいです」
渡辺康啓料理家
鳥取県生まれ。アパレル勤務を経て、料理家に。メディア出演のほか自身のYouTube「せせちゃんねる」も人気。近著『毎日食べる。家で、ひとりで。』(アノニマ・スタジオ)。東京・四谷にアトリエ兼ショップを開業予定。
photo : Kohei Yamamoto text : Mariko Uramoto edit : Wakako Miyake