とにかく「しまう家」の、アイデアと工夫。House of Ingenuity

Sanitary Space_兼ねるアイデアを駆使した、スリム構成。とにかく「しまう家」の、 アイデアと工夫。February 14, 2024

夫婦揃って建築士である青柳綾夏(あやか)さんと創(はじめ)さんが暮らす、ふたりが設計した家。とにかくしまうアイデアいっぱいの家、続いてのサニタリースペースのアイデアを紹介します。

最大の特徴は、洗面所、トイレ、バスルーム、脱衣所、洗濯機置き場、そのどれもがちゃんとは独立していないこと。鏡が開閉可能な壁を兼ね、一枚のドアが脱衣所のドアにも洗濯機置き場のドアにもなる。屋上に繋がる階段はバスルームの一部で、そこで体も洗える。「我が家では何かが何かを兼ねてくれないと、生活スペースは狭くなるばかり。でも『いたしかたなく』ではなく『ムダを省いた』ポジティブな設計なんです」(綾夏さん)。“兼ねる”は青柳邸の随所に見られるが、清潔を心がければ、水回りでもそれが叶う。脱衣スペースの壁に設置した〈旭イノベックス〉のタオルウォーマーが除湿にも有効。

 
屋上へと続く階段と踊り場をバスルームとして活用する。

洗面台に向かって右手にあるガラス扉を開けると、そこはバスルームであり、かつそのまま屋上へと繋がる階段室でもある。「バスタブまわりだけでなく、階段と壁、天井まで濡れていいタイルを採用。階段も洗い場の一部として使っています」
屋上へと続く階段と踊り場をバスルームとして活用する。

洗面台に向かって右手にあるガラス扉を開けると、そこはバスルームであり、かつそのまま屋上へと繋がる階段室でもある。「バスタブまわりだけでなく、階段と壁、天井まで濡れていいタイルを採用。階段も洗い場の一部として使っています」
洗面ボウルを置き型スタイルにし、
台の上を少しでも広く使う。

「物は使う場所の近くに」が信条。ゆえに、洗面、トイレ、風呂で使うグッズはストックまですべて洗面台と、その下、鏡に映るトイレ脇の棚(洗濯機置き場の背面にあたる)に収納。〈デュラビット〉の洗面ボウルは、設置に場所を取らず、便利。
洗面ボウルを置き型スタイルにし、
台の上を少しでも広く使う。


「物は使う場所の近くに」が信条。ゆえに、洗面、トイレ、風呂で使うグッズはストックまですべて洗面台と、その下、鏡に映るトイレ脇の棚(洗濯機置き場の背面にあたる)に収納。〈デュラビット〉の洗面ボウルは、設置に場所を取らず、便利。
スライドさせれば、洗濯機置き場用
ドアが奥の脱衣所用ドアにもなる。

寝室からトイレ、洗面、脱衣所へと向かうのに、洗濯機置き場の前を通る。「洗濯機は隠しておきたい。でもスペースや通路の広さを確保することを考えると専用の扉を付ける余裕はありませんでした。そこで、脱衣所の扉と両用にしてしまったんです」
スライドさせれば、洗濯機置き場用 ドアが奥の脱衣所用ドアにもなる。
寝室からトイレ、洗面、脱衣所へと向かうのに、洗濯機置き場の前を通る。「洗濯機は隠しておきたい。でもスペースや通路の広さを確保することを考えると専用の扉を付ける余裕はありませんでした。そこで、脱衣所の扉と両用にしてしまったんです」
オープン収納は白を基調に。細かいものはボックスに隠す。

トイレに腰かけるとすぐ右手にあたるところを収納に充てた。狭く扉の開閉が不可能なため、オープンスタイルになっている。「可能な限り白で統一。揃えられない色のものや雑多なものは白いボックスに入れるか、メーカーや種類を揃えると、すっきり」
オープン収納は白を基調に。細かいものはボックスに隠す。

トイレに腰かけるとすぐ右手にあたるところを収納に充てた。狭く扉の開閉が不可能なため、オープンスタイルになっている。「可能な限り白で統一。揃えられない色のものや雑多なものは白いボックスに入れるか、メーカーや種類を揃えると、すっきり」
洗面台の鏡は、トイレと脱衣所の 壁を兼ね、用途に応じ開閉可能に。
洗面台の鏡は、トイレと脱衣所の壁を兼ね、用途に応じ開閉可能に。

トイレは脱衣所でもあり、洗面所でもあるので、ここで身支度を整える。つまり、鏡は不可欠だが、なくて事足りる場面も。そこで、引き込み式にして、開ければ、1階食堂からの吹き抜けと、隣家との間の曇りガラスから明かりを取れるようにしてある。

House of Ingenuity とにかく「しまう家」の、アイデアと工夫。

キッチンの表に出ているものは、一日に複数回、ほぼ毎日使うもののなかの、さらにデザイン性の高いものに絞って。家電や、大小バラバラな鍋、保存容器などのように、機能的であっても、くつろぎの妨げになり得るものは扉の中にしまい、すっきり見せる。
キッチンの表に出ているものは、一日に複数回、ほぼ毎日使うもののなかの、さらにデザイン性の高いものに絞って。家電や、大小バラバラな鍋、保存容器などのように、機能的であっても、くつろぎの妨げになり得るものは扉の中にしまい、すっきり見せる。
 

夫婦揃って建築士という、青柳綾夏(あやか)さんと創(はじめ)さんが暮らすのは、ふたりが設計した家。予算が限られていたため、あえて相場より安い特殊な土地を探し、見つけたのは、高低差が4m以上ある建坪約24㎡の土地。家の一部は傾斜地に食い込むようにして立つ。コンパクトな家になることは明らかだったが、「ふたりして物を出しておきたくないタイプ。にもかかわらず、片付けが苦手なので、物の居場所を決めた上での収納の確保が大きな課題となりました」と綾夏さん。創さんいわく、「辿り着いた答えは、機能や場所をまとめ合わせること。省スペースを図るのはもちろんのこと、何より”しまいやすく””しまい込める”家づくりです」。階段途中にキッチンが現れ、バスルームは階段の踊り場で、階段は洗い場といった具合。とにかくしまうアイデアいっぱいの家を拝見する。

約50㎡の狭小地で、許容建坪は約24㎡。地下2階分を掘って、床面積を広げた。まわり階段で上下階を移動する、1フロア1室×4階建て。階段の踊り場が玄関を兼ね、階段上下は収納棚にするなどして、省スペースを実現。吹き抜け兼明かり取りを通じ、全階が繋がる。
約50㎡の狭小地で、許容建坪は約24㎡。地下2階分を掘って、床面積を広げた。まわり階段で上下階を移動する、1フロア1室×4階建て。階段の踊り場が玄関を兼ね、階段上下は収納棚にするなどして、省スペースを実現。吹き抜け兼明かり取りを通じ、全階が繋がる。
青柳綾夏 / 青柳 創 1級建築士

青柳綾夏 / 青柳 創一級建築士 / 一級建築士

妻の綾夏さんは筑波大学大学院修士課程修了。東京・杉並区で〈アオヤギデザイン〉を主宰、住宅や商業施設なども手がける。夫の創さんは東京藝術大学大学院修士課程修了。現在は設計事務所勤務。夫妻は4年前、現在小学4年生の未詠ちゃんと今の家に引っ越してきた。

photo : Yuka Uesawa illustration : Shinji Abe (karera)  edit & text : Koba.A

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