とにかく「しまう家」の、アイデアと工夫。House of Ingenuity
Living Dining Room_テレビを片付け、白壁を覆わない。とにかく「しまう家」の、 アイデアと工夫。February 12, 2024
夫婦揃って建築士である青柳綾夏(あやか)さんと創(はじめ)さんが暮らす、ふたりが設計した家。とにかくしまうアイデアいっぱいの家、ここではリビングルームのアイデアを紹介します。
キッチンから連続するリビングダイニングルームは、8畳あるかないか。それでも「キッチンの冷蔵庫と同様に、見た目のノイズになりがちなテレビも、扉の中に収納することにしたら、それだけで感覚的に広々。テーブルや窓は大きく、でもソファは置かないなど差し引きして、バランスを取るようにもしています。ぬいぐるみなどは寝室に飾っていますが、子どもの学習関連のものは、まだそう多くはないので、それらはいったん表に出さない暮らしを試しています」と創さんは話す。テラスや吹き抜けから入る光が珪藻土の天井や壁、マットなホワイトオーク材の床にやさしく反射するのも、部屋を伸びやかに見せるのにひと役買っている。

真っ黒なテレビモニターの存在感は大きい。「子どもも観ますし、情報収集するためにも、最も滞在時間の長い1階にテレビを置かないわけにはいきませんでした。それで、部屋の隅の凹みに押し込む形で専用コーナーを作り、扉も付けて、存在感を消す作戦に」

「狭いと小さな家具を選びがちですが、思い切って、大きめなものを置いたほうが、空間にダイナミックさが生まれます」。ダイニングテーブルは〈カール・ハンセン&サン〉。地上3mの高さに位置するテラスの眼前に遮る建物がないため、開放感もある。

戸袋に入れられる仕組みに。
テラスと”リビングダイニング”の境の大きな窓は引き込み式。「まわり階段と壁の間にスペースができたので、戸袋にしています。それでもまだ余裕があったので、そこにはカーテンをしまっておけるように、レールを戸袋の中まで延ばしてあります」

階段下収納へ。作品は内側に貼る。
「今のところ、長女には学習机を用意せず、リビング学習をさせています。それで、教科書やドリル、プリントは、勉強するテーブルに近い、2階の屋上に上がる階段下を活用して作った棚の中を定位置に」。同じ階段下、もう半分のスペースは冷蔵庫置き場。

長女の未詠ちゃんが寛ぐのはソファ代わりにしている、モロッコのプフ。「ほんとうは大きなソファが置けたらいいんですが、部屋が狭くなるので断念。ただ、プフは、現地でもそう使うらしいですが、中にシーズンオフの衣類をしまっておけるんですよね」
House of Ingenuity とにかく「しまう家」の、アイデアと工夫。

夫婦揃って建築士という、青柳綾夏(あやか)さんと創(はじめ)さんが暮らすのは、ふたりが設計した家。予算が限られていたため、あえて相場より安い特殊な土地を探し、見つけたのは、高低差が4m以上ある建坪約24㎡の土地。家の一部は傾斜地に食い込むようにして立つ。コンパクトな家になることは明らかだったが、「ふたりして物を出しておきたくないタイプ。にもかかわらず、片付けが苦手なので、物の居場所を決めた上での収納の確保が大きな課題となりました」と綾夏さん。創さんいわく、「辿り着いた答えは、機能や場所をまとめ合わせること。省スペースを図るのはもちろんのこと、何より”しまいやすく””しまい込める”家づくりです」。階段途中にキッチンが現れ、バスルームは階段の踊り場で、階段は洗い場といった具合。とにかくしまうアイデアいっぱいの家を拝見する。


青柳綾夏 / 青柳 創一級建築士 / 一級建築士
妻の綾夏さんは筑波大学大学院修士課程修了。東京・杉並区で〈アオヤギデザイン〉を主宰、住宅や商業施設なども手がける。夫の創さんは東京藝術大学大学院修士課程修了。現在は設計事務所勤務。夫妻は4年前、現在小学4年生の未詠ちゃんと今の家に引っ越してきた。
photo : Yuka Uesawa illustration : Shinji Abe (karera) edit & text : Koba.A