とにかく「しまう家」の、アイデアと工夫。House of Ingenuity
Kitchen_オープンなようでオープンにしない。とにかく「しまう家」の、 アイデアと工夫。February 10, 2024
夫婦揃って建築士である青柳綾夏(あやか)さんと創(はじめ)さんが暮らす、ふたりが設計した家。とにかくしまうアイデアいっぱいの家、まずはキッチンのアイデアから。
「本格仕様」「しまえる」「使い勝手のよさ」という、料理好きな綾夏さんの意向を組み込んだ、壁づけキッチン。1階のLDKは16畳ほどと、家族3人には少々コンパクトなスペースだが、北側一面を大胆に使い、5.5mと横に長く、ダイナミックに造作した。「気持ちよくおいしく調理できそうで、レストランの厨房のような、ピカピカのステンレスのワークトップにしました。作業効率も上がるので、本当なら、その上には何も出しておきたくありませんが、家庭ではなかなかそうもいきません。それでも5・5mもあれば、その下に多くはしまっておける算段です」と綾夏さん。「レンジフード、スイッチパネルまでも徹底的にしまいこみました」

キッチンは玄関からこの階に上がってくるまわり階段に届くほど長く、右端は、もはや階段の壁の一部。「買い物から帰ってきて、階段途中で、買ってきたものを右端の収納扉の中にしまうなんてことも。オーブンは、3段ほど階段を下りて開閉しています」

生活感を纏いがちな電化製品はなるべく隠したい。サイズの大きい冷蔵庫はその筆頭。「コンロに立った背中側あたりに、構造上必要でもある壁を一枚立て、冷蔵庫を隠せるようにしました。ダイニングのほうからは回り込まないとアクセスできません」

「換気扇は、レンジフードを頭上ではなく、壁の外に出してしまう〈協立エアテック〉の『スリムハイキⅡ』。IHクッキングヒーターなので煙が立ち上ることはあまりありませんが、強力排気で捕集率が高く、火元にも近いので匂いのキャッチも早い気が」

カウンター下の収納は扉付き。引き出しも扉の中だ。「扉を閉めたとき、引き出しの前面との間を10㎝強空けました。その余白を使い、引き出しの外側を”引っ掛ける収納”にしています(p.91上下の写真の左から2つ目の扉)」。収納ホルダーは〈山崎実業〉。

照明の調光や、床暖房などのスイッチパネルもひとまとまりにして、扉の中に収めてしまった(p.91上下の写真のいちばん左)。「裏に下階からの吹き抜けがあり、奥行きはありませんが、余らせておくのはもったいなくて。スパイスなどの小瓶にもぴったり」
House of Ingenuity とにかく「しまう家」の、アイデアと工夫。

夫婦揃って建築士という、青柳綾夏(あやか)さんと創(はじめ)さんが暮らすのは、ふたりが設計した家。予算が限られていたため、あえて相場より安い特殊な土地を探し、見つけたのは、高低差が4m以上ある建坪約24㎡の土地。家の一部は傾斜地に食い込むようにして立つ。コンパクトな家になることは明らかだったが、「ふたりして物を出しておきたくないタイプ。にもかかわらず、片付けが苦手なので、物の居場所を決めた上での収納の確保が大きな課題となりました」と綾夏さん。創さんいわく、「辿り着いた答えは、機能や場所をまとめ合わせること。省スペースを図るのはもちろんのこと、何より”しまいやすく””しまい込める”家づくりです」。階段途中にキッチンが現れ、バスルームは階段の踊り場で、階段は洗い場といった具合。とにかくしまうアイデアいっぱいの家を拝見する。


青柳綾夏 / 青柳 創一級建築士 / 一級建築士
妻の綾夏さんは筑波大学大学院修士課程修了。東京・杉並区で〈アオヤギデザイン〉を主宰、住宅や商業施設なども手がける。夫の創さんは東京藝術大学大学院修士課程修了。現在は設計事務所勤務。夫妻は4年前、現在小学4年生の未詠ちゃんと今の家に引っ越してきた。
photo : Yuka Uesawa illustration : Shinji Abe (karera) edit & text : Koba.A