小林エリカの文房具トラベラー
CUT小林エリカの文房具トラベラー vol.05「鋏 -はさみ-」&STATIONERY / July 29, 2021
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料理人が包丁を研ぐのに抜かりがないように、鋏を使う人間たるもの一様に、日々その鋭さを保ち、紙に、石に、グー・チョキ・パーに、勝負に、挑むべきである。
……とはいえ旅先の骨董市で見つけた錆びた鋏に、祖母の家の引き出しに眠っていた花鋏に、その切れ味をも凌駕する可愛さを見いだし、魅了されてしまったときの悶絶ときたらない。しかし、切れない鋏は、鋏にあらず。
というわけで、悩んだ挙げ句、大概は我が必殺技を駆使することになる。なんと普通の鋏ならアルミホイルを重ねて切るだけで、かなりシャープな切れ味になるのである。もちろん研ぎ師のところへ持ってゆくのも良かろうが、なにせ簡単なのがいい。せっせとアルミホイルを切りながら、光る鋏を見つめては、うっとり。
磨けば光る、研げば切れる、鋏です。
失敬、文房具にお洒落を突き詰めていたはずが、どうしたわけか私、いつの間にか重曹使って台所掃除的なテンション満載になっておりますが、愛には鋏には、なりふりなんて構っていられない。
![上/オランダはアムステルダムの運河沿いの骨董品店で入手した品。中/パリの蚤の市の発掘品。友人からのプレゼント。下/刃物といえばやっぱりドイツでしょうの〈ヘンケルス〉。"可愛い”と"切れる”の夢の合体がここにあり! 上/オランダはアムステルダムの運河沿いの骨董品店で入手した品。中/パリの蚤の市の発掘品。友人からのプレゼント。下/刃物といえばやっぱりドイツでしょうの〈ヘンケルス〉。"可愛い”と"切れる”の夢の合体がここにあり!](https://img.andpremium.jp/2020/06/04194209/hasami.jpg)
edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.6 2014年6月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。
作家・マンガ家 小林 エリカ
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シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。