小林エリカの文房具トラベラー

リボン小林エリカの文房具トラベラー &STATIONERY vol.34May 31, 2022

小林エリカ 文房具トラベラー
小林エリカ 文房具 トラベラー リボン

 女の子っぽい(とされる)ものが大嫌いだった。ピンク色はもとより、ひらひらしたスカート、レース、リボンなんてまっぴらごめんだと考え思いつめるあまり、少女漫画誌の『りぼん』さえ読めぬまま、自分の中にあるリボンを愛する心を長らく封印していた。
 しかし、ある時ルイ14世の肖像画の胸元にはひらひらしたレース、足元にはシルバーのハイヒールに大きなリボンがあしらわれているのを発見し(最高級なオシャレ)、なんだ、私の方が現代の社会的抑圧や因習にとらわれ屈しているのではないかという気持ちになったのだった。
 そうだ、男の子であろうと女の子であろうと誰であろうとリボンを愛する気持ちに本当は性差なんてないはずなのに。というわけで、不惑の四十手前で私のリボン熱は大爆発中である。レース、ベルベットにタフタ、この繊細なリボンたちの優美なことよ。結んでも解いても可憐である。
 ところで、私は草花の名前もいいけれど、サイン、コサイン、タンジェントも断然学びたいし、ディアナ・アグロンも好きだけどアインシュタインの方がもっと好き!

小林エリカ 文房具 トラベラー リボン左/いまはなき表参道の文具店で入手したイタリアレースリボン。右/デザイナーのIさんからいただいた日本が誇る〈木馬社〉製のリボン。窓辺に吊るすと内藤礼さん風に。下/香港の卸の布店で手に入れたビーズつき。
左/いまはなき表参道の文具店で入手したイタリアレースリボン。右/デザイナーのIさんからいただいた日本が誇る〈木馬社〉製のリボン。窓辺に吊るすと内藤礼さん風に。下/香港の卸の布店で手に入れたビーズつき。

edit : Kisae Nomura
※この記事は、No.35 2016年11月号「&STATIONERY」に掲載されたものです。


作家・マンガ家 小林 エリカ

シャーロック・ホームズ翻訳家の父と練馬区ヴィクトリア町育ちの四姉妹を描いた『最後の挨拶 His Last Bow』(講談社)発売中。2021年夏、はじめての絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)が発売。

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