MUSIC 心地よい音楽を。
土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/高木正勝 vol.2February 08, 2019
February.08 – February.14, 2019
Saturday Morning

子どもの頃、「将来の夢はなんですか」と聞かれると、「サッカー選手」とか「パン屋」と苦し紛れに書いてしまったのですが、頭の中ではいつも、「自然豊かな小さな川のほとりで、小さな小屋があって、木漏れ日がてらてらと綺麗で、僕はお爺さんでお茶でも飲みながら気持ちよさそうにピアノを弾いている」そんな光景が浮かんでくるのでした。図らずも、いま、そんな場所でそんな風に生活しているので、子どもの頃に自分の未来が見えていたのかしらと、不思議です。
アルバム『chai SUNTORY OOLONG TEA CM SONG COLLECTIONS』収録。
アルバム『chai SUNTORY OOLONG TEA CM SONG COLLECTIONS』収録。
Sunday Night

アイヌの唄です。Kapiw カピウ(かもめ)のUpopo ウポポ(うた)。「子どもは何人いるの? 二人いるよ。どうやって食べさせるの? 盗んでも食べさせるよ。どうやって着せるの? 盗んでも着せるよ」とカモメの母親たちの会話を唄っているようです。アイヌの唄は、とても短いフレーズを繰り返し何度も唄い回していきます。そうしているうちに唄声がぐるぐると螺旋を描いて、天へ昇ったり地へ降りたり、つられて一緒に唄ってみると、その場が響きに満たされて場も心も清められるようです。
アルバム『Mukkuri Hawehe』収録。
アルバム『Mukkuri Hawehe』収録。
音楽家/映像作家 高木 正勝

1979年生まれ、京都府出身。長く親しんでいるピアノを用いた音楽、世界を旅しながら撮影した「動く絵画」のような映像、両方を手掛ける作家。2001年にアルバム『pia』をアメリカのCarpark Records、「eating」をドイツのKaraoke Kalkより発表。以降、国内外でのコンサートや展覧会、細田守監督作『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』『未来のミライ』をはじめとした映画音楽、CM音楽、執筆など幅広く活動している。最新作は、自然を招き入れたピアノ曲集『マージナリア』、6年間のエッセイをまとめた書籍『こといづ』(木楽舎)。