MUSIC 心地よい音楽を。

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/太田美帆 vol.3January 20, 2023

January.20 – January.26, 2023

Saturday Morning

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Title.
Brown Rice
Artist.
222
菓子研究家「foodremedies」主宰の長田佳子さんが営まれる山梨のアトリエ「SALT and CAKE」で、222こと森俊二さんのライブがあって、ひょいと遊びに行ったのをきっかけにこのアルバムの存在を知りました。まずジャケットが素敵だな、と。八ヶ岳山麓に小さな別荘があるのですが、いつも眺める山脈がこのジャケットと被って仕方ありませんでした。
すごく似ている(実際は写真家の渋谷ゆりさんが撮影された「ヨセミテ国立公園」)。
年明け、山を横目に控え目な音量で222を流し、朝食のミルクティーを作っていたら、静かでメランコリックなサウンドは、日常とゆっくり溶け合っていきました。ヴィーガンであり、サーファーでもあり、オーガニックなライフスタイルを送る森さん。本作『Song For Joni』2曲目に収録された「brown Rice」は、実際、彼が玄米を炊いているときの圧力鍋の音なんだとか。生活の軽やかなノイズを作品に仕立てることが出来るのは、音楽の魅力の一つであり、才能を感じる瞬間でもあります。
アルバム『Song For Joni』収録。

Sunday Night

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Title.
ひかりのにおい
Artist.
太田美帆・Paniyolo
人生で一番辛かった時期、私を救ってくれたのは大切な友人でもあるクラシックギタリストPaniyoloの音でした。一身上の理由で子ども達と身を隠していた頃、移動の車で終始聴いていたのは彼の作品群。
「大丈夫。きっと日常は戻ってきますよ」。やんわり諭してくれるような、黙って隣にいてくれるような。自分の置かれている極端な状況と、彼の奏でる一貫して穏やかなサウンドの温度差に耐えきれず、何度も声をあげて泣きました。そんなPaniyoloと作る事が出来たアルバムがこの『空と花』。「ひかりのにおい」は私が癌に罹患という、またしても人生のターニングポイントに生まれた作品。「何の変哲も無い日々こそ宝物である」。そんな気持ちを込めて、歌い上げるというより、隣に座って呟いているといいう方がしっくりくるかもしれません。夜空に輝く星たちも、野に咲く花たちも、私達は同じ宇宙の光。共に瞬いて生きています。
アルバム『空と花』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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聖歌隊CANTUS主宰 太田 美帆

東京都出身。8歳で出逢った「聖歌」に心震わせ、音楽家を志す。福岡のギャラリー、うつしきより『共鳴』『嬉々』2枚のアルバムをリリースするが、甲状腺癌により一時的に声を失う。自己流ボイストレーニングを経て復帰。ピアノの小松陽子、ヴァイオリンの根本理恵と共にクラシック音楽ユニット'adagio'もスタート。ギタリストPaniyoloとも活動中。一男一女のシングルマザー。クリスチャン。

instagram.com/ura.cantus

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