MUSIC 心地よい音楽を。

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/Maika Loubté vol.3May 19, 2023

May.19 – May.25, 2023

Saturday Morning

Title.
Hum!
Artist.
maco marets
当コラムのVol.1で、一瞬だけ朝ごはんの話をした記憶があるのですが、はい、私は無類の朝ご飯好きです。maco maretsの「Hum!」が収録されているアルバムのハムと卵が目立つオーソドックスな朝ご飯アートワークにまず目が釘付けです。maco maretsくんとは、何度もコラボレーションをさせていただくなど私にとってはマイメン的ミュージシャンな間柄なのですが。なんと言っても、彼のラップや言葉のひとつひとつが、生活と空間に何のストレスもなく深く浸透していく、本当に稀有な存在だとつくづく思います(照れ臭いので、面と向かっては言わないんですけどね!ガハハ)。土曜日の朝という余裕ある時空間に、maco maretsの音楽が、その余白をさらに大らかに広げてくれるんだよと心から信頼しています。
アルバム『KINŌ』収録。

Sunday Night

Title.
Jeux d’eau (水の戯れ)
Artist.
Maurice Ravel
週末に遊び呆けて溜まった家事の中でもなるべく皿洗いだけは済ませて眠りたいですね(私は、皿洗い苦手なのですが)。ラヴェルの「水の戯れ」は、水そのものを音で描き切る試みが1901年当時にしてはかなり画期的な作品だったといいます。そこに感情や思いの丈、慕情などを込める必要はなく、ただそこに水がある様、止まることなく流れて形を変えゆくことを煌びやかに表現するのです。皿洗いも、めんどくせーとかだるいなどの感情にとらわれず、できることなら蛇口の水に目を凝らしてキラキラと済ませたいなと個人的に思います。話は飛びますが、宇多田ヒカルさんのあの「光」のMVや、Netflixオリジナル映画『ROMA(ローマ)』での皿洗いシーン、どちらも皿洗いが異様なまでに映像美にハマっていますよね。この曲をBGMに皿を洗えば、映画のように、水を使った究極の美しい営みをやってるようにすら感じられるんじゃないかしら(という願望)。
アルバム『Martha Argerich Piano Recital Chopin, Brahms, Prokofiev, Ravel, Liszt』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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シンガーソングライター/プロデューサー/DJ Maika Loubté

幼少期から10代を日本、パリ、香港で過ごす。高校卒業後、ヴィンテージアナログシンセサイザーに出合う。先進的なエレクトロニック・ミュージックを基軸としながら、テクスチャーをはぎ取ったオーセンティックな「歌」そのものを重要視している。国内外のアーティストとのコラボレーションやサウンドプロデュース、CMへの楽曲提供、リミックス、ナレーションなど多岐にわたって活動中。2020年10月リリースの「Show Me How」がマツダの新型車「MAZDA MX-30」のテレビCMのコラボ曲として大々的にフィーチャーされ、自身もCMに出演した。2021年10月20日に最新アルバム『Lucid Dreaming』を発表。2022年1月にはSpotifyのプログラム「SpotifyEQUAL」マンスリーアーティストに選ばれ、New York Times Squareの看板広告を飾った。2023年、ニュービジュアルと共に新作発表予定。

maikaloubte.com

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