MUSIC 心地よい音楽を。

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/林正樹 vol.3January 15, 2021

January.15 – January.21, 2021

Saturday Morning

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Title.
El Mayor
Artist.
Anders Jormin Severi Pyysalo
寒い日に暖くした部屋でアイスクリームを食べるあの幸せ感を味わうべく、冬の朝には、より寒い国の音楽に心震えてみたい。スウェーデンを代表する世界的なコントラバス奏者Anders Jorminと、フィンランドのビブラフォン奏者Severi Pyysalo。楽器を究極まで操り切ることのできる二人だからこそ、演奏から生まれる緊張感ある音の”スペース”を存分に楽しむことのできる珠玉のDUO。キューバのヌエバトローバの大巨匠Silvio Rodriguezの曲を元に、Bobo Stenson Trioでのしっとりした演奏ともまた違う瑞々しい演奏が繰り広げられている。一見何色とも言い難いメランジ調のカラーの如く、聴けば聴くほどにそこに色々な色調が浮かび上がってくるような、奥行きのあるサウンドスケープにしんみりと熱くさせられる。(ちなみに真夏にはひんやり冷房を効かせた部屋でベッドに潜りこむのも好きだ)
アルバム『Aviaja』収録。

Sunday Night

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Title.
Opening Image
Artist.
Arve Henriksen
ジャズフィールドにおいて、生楽器とエレクトロニクスをセンスよく融合させるアーティストが豊潤に活躍しているノルウェー。他にない個性を放つレーベル〈Rune Grammofon〉に目も耳も惹きつけられる。このレーベルのアートワークの多くを手がけているのは、本人も音楽家でもあるKim Hiorthoy。ミッドセンチュリーの北欧デザインを引き継いだ、色の掛け合いが楽しいコンテンポラリーなデザインは、〈ECM〉のそれとはまた違うが音楽とのマッチングにも高いアート性を感じさせてくれる。
電子音、生楽器、様々なサウンドの中に調和しつつも浮き立つArve Henriksenの独特なトランペットの音色は、日本の冬の景色にも不思議と溶け込んでゆくなあと思っていた。最近遡って彼の初期の、和の要素を多分に取り入れた「Sakuteiki」を聴いて、そのことがすとんと腑に落ちた。いつかは共演してみたい音楽家の一人だ。
アルバム『Chiaroscuro』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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ピアニスト 、作曲家 林 正樹

自作曲を中心とするソロでの演奏や、生音でのアンサンブルをコンセプトとした「間を奏でる」などのプロジェクトの他に、小野リサ、渡辺貞夫、菊地成孔、徳澤青弦など様々な音楽家とアコースティックな演奏活動を行なっている。多種多様な音楽的要素を内包した、独自の諧謔を孕んだ静的なソングライティングと繊細な演奏が高次で融合するスタイルは、国内外で高い評価を獲得している。2021年2月公開予定の映画『すばらしき世界』(監督:西川美和)の音楽を担当。

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