MUSIC 心地よい音楽を。

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/原 摩利彦 vol.3August 21, 2020

August.21 – August.27, 2020

Saturday Morning

Title.
Dja Tigui Kie
Artist.
Les Imbattables Léopards
夏はもっとも好きな季節だ。何かが始まるような期待、お盆にはなんだか不思議な時間がある。そしてヒグラシの声とともに夏が終わってしまうと感じる。中学生のとき、バスケ部に入っていたが、夏休みにも練習があるというのを知って、そんな馬鹿なことがあるか!と1学期の終わりに辞めた。それほど夏は私にとって大切だったのだ。
花柄の短パンを履いて、土曜の朝から踊りながらご飯を作るのにピッタリな曲。歌詞の意味は全くわからないけれど、所々「ネコ!」と聞こえてくる。底抜けに明るい、と思っていたらだんだん哀愁も感じてくる。まさに8月の音楽。
アルバムV.A『Bobo Yéyé: Belle Époque in Upper Volta』収録。

Sunday Night

Title.
Quaderno musicale di Annalibera: XI. Quartina
Artist.
Luigi Dallappicola
去年の今頃はフィレンツェにいた。たった2日間だけの滞在だったが、美しい街並みと偉人たちの遺産に感銘を受けつづけた。宿泊した小さなホテルは、中世からずっと変わらない建物で、エアコンの性能は抜群だとオーナーは力強く説明してくれた。家具もバスルームも綺麗でとても快適だったが、ほうきを使っても届かないくらい高いところにあるエアコンはあまり涼しくはなかった。
この街のピッティ宮殿で、ダッラピッコラは20歳の時に、シェーンベルク自らが指揮する「月に憑かれたピエロ」を聴き、衝撃を受けたという。ダッラピッコラが作る12音技法(シェーンベルクが体系化した現代音楽の作曲技法)を用いた作品には、他の作曲家とは違う彼独特の響きがある。バロック時代の音楽モチーフを使った「Tartiniana seconda:   I. Pastorale」も美しい。彼が生涯のほとんどを過ごしたフィレンツェをもう一度訪れて、今度は長めに滞在して、その秘密に触れてみたいものである。
アルバム『Dallapiccola: Musica da camera』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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音楽家 原 摩利彦

京都を拠点に活動。国内外問わす現代アートや舞台芸術、インスタレーションから映画音楽まで幅広く活躍。最近では松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳ら豪華俳優陣が出演、読売演劇大賞最優秀作品賞を受賞し話題となった野田秀樹演出の舞台作 『Q:A Night At The Kabuki』でサウンドデザインを担当。日本を代表するアートコレクティブ『ダムタイプ』のメンバーとしても活動。世界ツアーも大盛況となり森山未來もダンサーとして参加している世界的振付師ダミアン・ジャレ(トム・ヨーク『ANIMA』の映像作品の振付も担当)と彫刻家名和晃平によるプロジェクト『Vessel』では坂本龍一と共に劇伴を手がける。Apple 新CM『Macの向こうから ̶ 新海誠』に楽曲が起用されるなど、次から次へと活動の場を広げている。3年ぶりとなる待望のソロ作品『PASSION』が今年6月5日にリリースされた。

marihikohara.com/works

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