Music

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/伊藤ゴロー vol.2December 13, 2019

December.13 – December.19, 2019

Saturday Morning

Title.
Different Trains
Artist.
デイヴィッド・ロバートソン指揮 リヨン国立管弦楽団
今年の土曜日もあと3回。この時期独特の、新しい朝の空気と光。
おすすめしたいのは、スティーブ・ライヒの「Different Trains」。第二次世界大戦時の体験が作曲のテーマらしいが、僕は単純に、疾走する走行音、黒煙をはく機関車の咆哮がスリリングに挿入されているところに興奮するのだ。「Pacific231」(Pacific 231の”231”の数字は車軸配置を表している)という曲がある。フランス6人組のアルテュール・オネゲル1923年の作品で、機関車が蒸気を吐きながらゆっくりと車輪が動きだし、やがて疾走してゆく様を描写した音楽。アルフレッド・ジャリの『超男性』の中の機関車と五人乗りタンデム自転車によるパリ⇄シベリア1万マイルレースの物語がシンクロして、「Pacific231」の文字を見ただけで、空想世界に傾倒していた青春時代が蘇ってくるのだが、「Different Trains」も同じ気分になる。
アルバム『Steve Reich: Different Trains』収録。

Sunday Night

Title.
The States
Artist.
Julia Wolfe
僕は機関区の目の前の家で生まれた。(またしても汽車の話!)
子供の頃は、近所の子らと、こっそり操作場に入って遊んでいた。回転台のC60形蒸気機関車を見るのか好きだった。ジュリア・ウルフの「The States」と名付けられたこの作品は、機関車を描写したアンサンブルの中でアメリカの州の名前が歌われている。ボーカルグループ、トリオ・メディーヴァルとバング・オン・ア・カンによる少しロックな室内楽はミニマルで、ちょっとユーモラスで、まさにパタフィジックな音楽と言ってもいいのではないでしょうか。
アルバム『Steel Hammer』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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作曲家/ボサノヴァ・ギタリスト/音楽プロデューサー 伊藤 ゴロー

ボサノヴァ・フィーリングを感じさせる独自の楽曲で、ロック~クラシック~ミニマルとジャンルを横断し音楽を探求。独特のストリングス・アレンジやハーモニーはコードの魔術師と呼ばれる。ソロ以外にもボサノヴァ・デュオ「naomi & goro」としても活動中。坂本龍一、細野晴臣、高橋幸宏、「ジャキス&パウラ・モレレンバウム」との共演は海外でも話題を呼んだ。2017年、アルバム『アーキテクト・ジョビン』がハイレゾ音源大賞、ブラジルディスク大賞2位を受賞。近年は、原田知世のアルバムをプロデュース。最新アルバム『Candle Lights』収録曲「冬のこもりうた」は、現在公開中映画『すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』の主題歌となり異例の大ヒット。 V.A.『ゲッツ/ジルベルト+50』他、多数のアルバムをプロデュース。映画『君は月夜に光り輝く』『思い、思われ、ふり、ふられ』、TVアニメ『アルテ』を始め多くの映画音楽を担当。2020年1月1日一般発売、Negiccoのkaede 1stフルアルバム『今の私は変わり続けてあの頃の私でいられてる。』 収録曲、「永遠の断片(かけら)」(作詞・作曲・編曲:伊藤ゴロー)を楽曲提供。

itogoro.jp

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