MUSIC 心地よい音楽を。

今月の選曲家 エリ・リャオOctober 06, 2017

October.06 – October.12, 2017

Saturday Morning

&MUSIC
Title.
Everybody Loves The Sunshine
Artist.
Roy Ayers Ubiquity
土曜の朝、夜の続き。誰かの夜が終わろうと、誰かの朝が始まろうとする頃。寝る準備もそこそこに眠りこけ、目が覚めると、朝はもう私の街からいなくなっている。ついこの間まであったと思った夏の名残りも、10月の朝にはすっかり消えていて、明け方に聴こうと思っていた曲は季節外れになっている。「でも、」と、この曲をかけてみたくなった。長袖のパジャマで、あたたかいお茶がほしくなっているが、そんな朝もやっぱりこの曲が好きだ。朝焼けの見えない部屋、目を閉じていても、どこか遠くで朝が来ていて、私は安心して眠っていていいような気持ちになるのだ。
アルバム『Everybody Loves The Sunshine』収録。

Sunday Night

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Title.
A Sunday Kind Of Love
Artist.
Etta James
題名に曜日の入った曲はどこか特別だ。カーペンターズの「Rainy Days and Mondays」サイモン&ガーファンクルの「Wednesday Morning, 3 A.M.」。ある曜日の持つ何かが、音楽の中で私の知っている景色とぴたっと合う瞬間がある。日曜の夜は静かだ。夕方には買い物に出て、部屋着につっかけの人々に混ざり、食料品をかかえて帰ったら、家でゆっくり、ただ火を通しただけのような食事をしたい。片付けを済ませ、電気を消し、無事に一日が終わっていくが、目を閉じる頃、日曜の静けさがふと表情を変えることがある。真夜中の闇。エタの歌は光を届ける魔法ではない。だけど私は、暗がりを覗いたまま、深く深く、慰められている。
アルバム『At Last!』収録。
&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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シンガー Eri Liao (エリ・リャオ)

台湾・台北生まれ。東京大学文学部宗教学科卒業。同大学大学院を中退、コロンビア大学大学院芸術学部へ編入、NYで文芸創作とジャズを学ぶ。祖母の死をきっかけにコロンビア大大学院も中退、本格的に音楽活動に取り組む。Eri Liao Trioとして2017年8月にCDデビューを果たす。最新アルバムに『紅い木のうた』がある。

eriliao.jimdo.com

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