Music

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/butaji vol.2April 14, 2023

April.14 – April.20, 2023

Saturday Morning

Title.
Drone3
Artist.
The Beacon Sound Choir
35名のコーラス隊がロンドンのレコード屋で一斉に歌った録音を元にしたドローン。歌っているのはプロの方ばかりではないようで、その不安定な発声が大人数の発声によって支えられている、というかフェードインとフェードアウトの繰り返しで全てが飲まれていく。咳や衣擦れや足音なども一人が鳴らしていると目立つと思うのですが、全員がそうだから鳴ってて当然ですよねという感じで音楽になって溶け込んでいく。不安定さ、不完全さに安心を見出すことができる瞬間があって、偶発的なノイズさえも大人数になれば音楽として流れていく様子に目が醒まされるようです。これを聴きながら瞑想、というより聴いていることが瞑想になるような曲。
アルバム『Sunday Songs』収録。

Sunday Night

Title.
ひとつだけ変えた
Artist.
キセル
主体的に生きる決意についての歌詞だと思うんですが、豪文さんの歌声はアタックが小さめで、これは比喩が過ぎるかもなんですけどヴァイオリン奏法っぽい歌い方で尖らず親しみがあり、優しく響いてきます。穏やかなアレンジにミニマルなフレーズが繰り返されて浮遊感があるんですが、アウトロではノイズギターが不穏に響いて曲がフェードアウトしていく。世界のどこかで鳴っている雷鳴のような、自分は認知しないようにしたものでも確かに存在していることを予感させている気がします。それぞれの要素が反目せず、全体では響きが調和しているのがとても気持ちいいです。一日の終わりにぴったり、大好きな曲。
アルバム『The Blue Hour』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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シンガーソングライター butaji

幼少期からクラシック音楽に影響を受けて作曲を始める。コンセプト立てた楽曲制作が特徴で、生音を使ったフォーキーなものから、ソフトシンセによるエレクトロなトラックまで幅広い楽曲制作を得意とする。2013年に自主制作したep「四季」が話題を呼び、1stアルバム『アウトサイド』、2ndアルバム『告白』を発売。2021年に3rdアルバム『RIGHT TIME』を発売し『APPLE VINEGAR – Music Award2022』の大賞を受賞。2022年にはドラマ『エルピスー希望、あるいは災い-』主題歌「Mirage」に作詞、作曲で参加した。ライブでは弾き語りを始めバンド、デュオなどさまざまな形態で活動中。トラックメイカーの荒井優作とのユニット・butasakuとしてもライブ&リリース中。

twitter.com/butaji_tw

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