BOOK 本と言葉。
本屋が届けるベターライフブックス。『椿の海の記』石牟礼道子 著(河出書房新社)選・文 / スロウな本屋 / September 30, 2021
This Month Theme暮らしの中でずっと大切にしている本。
近代が押し寄せてくる少し前、「土や泥がまだ生きていた頃」、ひとの暮らしと自然は豊かに結びついていた。豆・穀物を干し、味噌や麹を仕込むには、日の昇り沈みを見ながらタイミングの判断が肝要で「天気の見頃は年寄りたちの才覚」だった。著者の祖母おもかさまは、盲目で心を病み、裸足で外を彷徨したりしていた。陽光の動きを五感でききとっているからこそ、彼女の発する「今日は、よか豆干し日和ばえ、なんもかんも出したかえ」というひと言は、隣り近所からも頼りにされた。なんと美しい時代があったことか。かくありたいと憧れながら、人間都合で梅干しや味噌を仕込んでは、毎年本書を読み返す自分がいる。反省が足りない。
BOOKSHOP スロウな本屋
「ゆっくりを愉しむ」をコンセプトに、店主が選んだ絵本と暮らしの本が揃う新刊書店。
岡山駅からほど近い静かな住宅街に戦前から残る木造長屋を店主自ら改装。畳敷きの
店内でゆったりと好きな本を選ぶことができる。ワークショップを開催し、本を通じて、
ひと、モノ、コトを繋げていくことを大切にしている。
住所:岡山県岡山市北区南方2-9-7
営業時間:11:00 - 19:00
定休日:火、水、木曜