スロウな本屋 – BOOKSHOP | & Premium (アンド プレミアム)

BOOKSHOP スロウな本屋


選・文 / スロウな本屋 / October 14, 2021 本屋が届けるベターライフブックス。『迷子の魂』オルガ・トカルチュク 文 ヨアンナ・コンセホ 絵 小椋彩 訳(岩波書店)

This Month Theme暮らしの中でずっと大切にしている本。

迷子の魂

あるところに働き者の男がいた。忙しすぎて自分の名すら思い出せなくなった男に、医師は言った。「わたしたちを上から見たら、忙しく走り回る人で世界はあふれかえっているでしょう。みな汗をかき、疲れきっている。そしてかれらの魂は、いつも背後に置き去りにされて、迷子になっています。魂がじぶんの主に追いつけないのです」助言に従い、男は迷子になった魂をじっと待つことにした。何日も、何年も、ただただ待ち続けた。ある日、ドアをノックする音がして……!?   私たちの暮らしは、どうしてこんなに慌ただしくなってしまったのか。自分の魂は、今どこにいるだろうか。ノーベル文学賞作家トカルチュクの美しい絵本が問いかけてくる。


選・文 / スロウな本屋 / October 07, 2021 本屋が届けるベターライフブックス。『火の誓い』河井寛次郎 著(講談社)

This Month Theme暮らしの中でずっと大切にしている本。

火の誓い

陶芸家 河井寛次郎は、「朝鮮民族美術展」で見た無名の陶工の簡素で美しい作品に衝撃を受ける。後に柳宗悦らと民藝運動を開始、美の背後に隠れているものを探り続ける。「要るだけの物しか有ってない生活、(…中略)棄てるものさえ始めから有たない生活」 「子供達は何処の米か判らないような米ではなく、土地の米から、土地の野菜から、近くの海の魚から彼らの身体を貰った。土地の声である地方語から心を貰った。なだらかな山と静かな入り海と湖と、それにはさまれたこきざみの田や畑から、気質を貰った」 各地の手仕事の現場を歩き、生みだされた寛次郎の言葉「暮しが仕事 仕事が暮し」を、いかなる時もこころに留めておきたい。


選・文 / スロウな本屋 / September 30, 2021 本屋が届けるベターライフブックス。『椿の海の記』石牟礼道子 著(河出書房新社)

This Month Theme暮らしの中でずっと大切にしている本。

椿の海

近代が押し寄せてくる少し前、「土や泥がまだ生きていた頃」、ひとの暮らしと自然は豊かに結びついていた。豆・穀物を干し、味噌や麹を仕込むには、日の昇り沈みを見ながらタイミングの判断が肝要で「天気の見頃は年寄りたちの才覚」だった。著者の祖母おもかさまは、盲目で心を病み、裸足で外を彷徨したりしていた。陽光の動きを五感でききとっているからこそ、彼女の発する「今日は、よか豆干し日和ばえ、なんもかんも出したかえ」というひと言は、隣り近所からも頼りにされた。なんと美しい時代があったことか。かくありたいと憧れながら、人間都合で梅干しや味噌を仕込んでは、毎年本書を読み返す自分がいる。反省が足りない。


選・文 / スロウな本屋 / September 23, 2021 本屋が届けるベターライフブックス。『一銭五厘の旗』花森安治 著(暮しの手帖社)

This Month Theme暮らしの中でずっと大切にしている本。

一銭五厘の旗

「暮しのなかで美しいものへの感覚を洗練させるには、ふだん美しいものに接していなければならない」と説く花森安治。美しいものとは、いったい何だ? 手に取って触れられるもの、数値化できるものだけではなさそうだ。「昨日そうしたから今日もそうする。ひとがそうしているから、じぶんもそうする。それはらくかもしれないが、それでは生きてゆく甲斐がないのである」「どんなわかりきったことでも、一度じぶんの手で受けとめて、じぶんなりに考えてみて、ほんとにそうなのか、じぶんでたしかめる」いいね! の数でもランキングでもなく、「素直に、美しいものを美しいとみる、その感覚」を私たちは忘れないでいたい。


BOOKSHOP スロウな本屋

「ゆっくりを愉しむ」をコンセプトに、店主が選んだ絵本と暮らしの本が揃う新刊書店。
岡山駅からほど近い静かな住宅街に戦前から残る木造長屋を店主自ら改装。畳敷きの
店内でゆったりと好きな本を選ぶことができる。ワークショップを開催し、本を通じて、
ひと、モノ、コトを繋げていくことを大切にしている。
住所:岡山県岡山市北区南方2-9-7
営業時間:11:00 – 19:00
定休日:火、水、木曜

slowbooks.jp

Latest Issue花を飾る、緑と暮らす。2022.04.20 — 880円