BOOK 本と言葉。
『阿・吽1』おかざき真里 著(小学館) 選・文/忘日舎Book 131 / September 14, 2018
This Month Theme素敵な生き方を感じる本。
日本の仏教史における重要な二人の僧、最澄と空海。彼らを主人公に据え、当時の歴史群像を大胆なエンターテインメントとして描くこのマンガの面白さは、スリリングなストーリー展開ばかりではない。作家がその圧倒的な画力とともに問いかけるのは、大げさでなく「生きるとはなにか」そのものである。愛と生と死、エロティシズム、暴力、人間の業の深さがこの作品には凝縮されている。ここで描かれる最澄と空海の魅力に抗うのは、性差を超えて難しいように思われる。第1巻には「犀の角のごとくただひとりゆけ」という言葉が表れるが、魅力的な生き方をするためには、歴史に学ぶのがいちばんだ。もうひとつ、彼らが「読む」行為によって何かを変えうるという意志が、その迫力極まる画とともに描かれている点も見逃すことはできない。現在、第8巻まで刊行。
vojitsusha 忘日舎
本と言葉と場所の可能性を広げるイベントも開催するなど、言葉にはしづらい感覚的な豊かさや感受性を育てることを目指したブックショップ。
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