Lifestyle

あの人は、どんな器を使っているのか。
03 インテリアデコレーター・湖心亭 &Utsuwa 器の基本と、楽しみ方。October 29, 2022

2022年10月5日に発売した「&Utsuwa 器の基本と、楽しみ方。」では、陶磁器やガラスや漆器、古伊万里や世界各国の器など、27人の器好きたちの使い方を紹介しています。そこで、インテリアデコレーターの湖心亭さんが使っている千年前の古物を見せていただきました。

CHINESE & KOREAN ANTIQUES千年前の古物も現役で使う。

NAME Koshintei  OCCUPATION Interior Decorator

茶壺(ちゃふう)を温める湯を受け止める茶船(ちゃせん)にしているのは、李朝の三島皿。右の杯は古伊万里蕎麦猪口。
茶壺(ちゃふう)を温める湯を受け止める茶船(ちゃせん)にしているのは、李朝の三島皿。右の杯は古伊万里蕎麦猪口。
リビング。正面の2つの李朝の膳はパートナーと自分の食卓。奥の膳の上にあるのは今、最も気に入っている李朝の白磁徳利。花生けに使う。
リビング。正面の2つの李朝の膳はパートナーと自分の食卓。奥の膳の上にあるのは今、最も気に入っている李朝の白磁徳利。花生けに使う。

 東京の住まいに落ち着いて約6年。その頃から湖心亭さんの器収集も本格的に始まった。ただし、古いもので空間をしつらえたいという思いは、すでに高校生の頃に芽生えていた。
「20、30代は忙しくてその気持ちをずっと抑え込んでいたのですが、ようやく時間にも余裕ができて、一気に堰が切れた感じです」
 古物の美しさに目覚めたのは、叔母の影響が大きい。
「今、私の社名にしている『湖心亭』という骨董店を営んでいて、中国に通っては、清や明の時代のものを買い付けていました。それが30年くらい前。その後は韓国に行き始め、李朝の民画や拓本もありましたね。実家と違って叔母の家にはいろいろな国の古いものがたくさんあって、すごく格好いい、と思っていました。私にとっておしゃれな住まいとは、その叔母の家なんです。彼女自身も一人で世界のあちこちに出かける、とても果敢な人でした」
 そして、いつか自分もそういった空間を手に入れたいと願い、実現したのが、今の部屋なのだ。
「これは李朝の滲み壺で、これはさらに前の高麗のもの。平安時代の猿投窯(さなげよう)の壺に、このガラス瓶は紀元前のローマンガラスです……」と、一つ一つのものを愛おしそうに説明してくれる湖心亭さん。それらはガラス棚に展示品のようにきれいに収められているが、すべて実用。数百年と経ったものでも飾るのではなく、ふだんの生活に生かしている。
「壺は花入れにすることが多いのですが、皿などはいかに中国茶の道具に使えるかを考えちゃいますね」
 中国茶にハマりだしたのは約2年半前。「それも叔母の影響。台湾から持ち帰った烏龍茶を工夫式で淹れてくれたのが素敵で、いつか自分もやりたいと思っていました」
 茶の風味を味わうだけでなく、茶道具に見立てた器の、組み合わせの妙を日々楽しんでいる。
「しみじみきれいだなあ、と感じます。何より安らぐ時間です」

東西の骨董が収められた棚。「名品よりもその時代、日常の中で繰り返し使われてきた慎ましさや、時の経過がそのまま表情となった侘びた姿に惹かれます」
東西の骨董が収められた棚。「名品よりもその時代、日常の中で繰り返し使われてきた慎ましさや、時の経過がそのまま表情となった侘びた姿に惹かれます」
収集のメインとなる中国と朝鮮半島の陶磁。上中央は高麗の蓮弁紋青磁碗。「花弁の描き方が簡素で、氷裂した肌が美しい」。伏せた杯は北宋の青磁。
収集のメインとなる中国と朝鮮半島の陶磁。上中央は高麗の蓮弁紋青磁碗。「花弁の描き方が簡素で、氷裂した肌が美しい」。伏せた杯は北宋の青磁。
フランスのアンティーク棚の引き出しに収められた染付や瑠璃釉の器。小皿は釉薬の色別に収納。骨董だけでなく現代ものも。
フランスのアンティーク棚の引き出しに収められた染付や瑠璃釉の器。小皿は釉薬の色別に収納。骨董だけでなく現代ものも。
最近、好んで集めている、くらわんかなど江戸時代の素朴な庶民の雑器。「器は暮らしの質を上げてくれる存在です」
最近、好んで集めている、くらわんかなど江戸時代の素朴な庶民の雑器。「器は暮らしの質を上げてくれる存在です」

photo : Ayumi Yamamoto edit & text : Wakako Miyake


インテリアデコレーター 湖心亭

叔母の骨董店から屋号を引き継ぎ社名に。蒐集品をもとに現在自身の骨董店を準備中。Instagramのアカウントは@koshintei。

instagram.com/koshintei

Pick Up おすすめの記事

Latest Issue 最新号

Latest Issuepremium No. 126窓辺に、花と緑を。2024.04.19 — 930円