花屋『みたて』の「折々に見立てる、京の暮らし」
土器に咲く「バイカオウレン」。Vol.23 / December 09, 2021
四季折々に迎える歳時記を、京都の花屋『みたて』が植物を通して表現。一つの作品を通して、京都ならではの生活が見えてきます。
土器に咲く「バイカオウレン」。
常緑の山野草として木々の足元を彩るバイカオウレンは、春になり新しい葉が芽吹くのに先駆けて白い花を咲かせる。小さな花が梅の花に似ていることからその名がついた。〈みたて〉では梅や桜などと寄せ植えにし、木々に花が咲く前にまず足元からという趣向を凝らすのにも使われている。
今回、可憐なバイカオウレンを生けたのは土師器(はじき)の残欠。歴史を辿れば、弥生土器ののちに作られるようになり、古墳時代から平安の頃まで焼かれたという。素朴な表情を持つ素焼きの土器は、さりげない山野草ともよく似合い、お互いを引き立てる。完品であれば希少で値も張る土器も、残欠であればまた別。京都では骨董市や骨董店に並ぶことも多くあり、値段も手頃となっている。加えて欠けや割れが表情をもたらしてくれるから、目に留まればまずひとつ手に入れてみたいものだ。
山野草を数多く扱う〈みたて〉では、相性のよい土器を花器として使い、提案することもしばしば。右奥に見えるイイダコの蛸壺なども、時代は違っても鄙びた佇まいは土器に通じるものがある。一部に穴があいたものは壁掛けにして使うなどのアレンジも楽しいもの。残欠を花器に見立てるのもまた、草花を暮らしにさりげなく取り入れる〈みたて〉らしいアイデアとなっている。
photo : Kunihiro Fukumori edit & text : Mako Yamato
*『アンドプレミアム』2017年5月号より。
花屋 みたて
和花と花器を扱い、四季の切り取り方を提案する京都・紫竹の花屋。西山隼人・美華夫妻がすべてを分担し営む。