5 人の料理家が選ぶ、愛用の台所道具55
大館まげわっぱの老舗〈栗久〉のおひつ。渡辺有子さんの愛用する台所道具①December 21, 2023
世代や時代を超えて、長く使い続けられるもの。
「長く使えるもの。それが私にとってのいい道具」と話すのは、旬の素材を生かしたシンプルな料理が人気の渡辺有子さん。今回紹介してもらった道具は、まさにその言葉を象徴するエピソードがたくさん。
「土鍋はもともと夫の祖母が使っていて、それが義母、夫の手に渡り、今は私が愛用しています。寒い時季はこれでお味噌汁を作ることが多いですね。口が広いので、具がたくさん入れられますし、これで作るといつもの味噌汁も〝ご馳走感〞が出ます」
フランスの蚤の市で出合ったカトラリーも時を超え、渡辺さんの手元にやってきたアイテムだ。
「ステンレスよりも口当たりがいいのでシルバーが好きです。アンティークは根気強く探すのがコツで、私が重視するのはサイズ感。日本人の手に扱いやすい大きさのものが理想なので、ブランドは限定していません。大事にメンテナンスをしながら、子どもにも受け継いでいけたら、と思っています」
おひつは二十年選手。食後に毎回使う食器洗いスポンジもへたれにくいものを選んでいる。
「しっかりしたつくりのスポンジは泡立ちがいいから洗い物が手早く済み、弾力が長持ちするのでストレスが少ない。キッチン道具は安価なものも多いですが、消耗品だから安くていい、ではなく、長く使えるかどうかで選んだほうが、いい道具に出合える。使っていくうちに手に馴染んでいくので、それが使いやすさにつながります。料理が苦手だから立派な道具じゃなくていいと思う方にこそ、いいものを使ってみてほしい。『こんなに切りやすいんだ』とか『簡単にすくえる』といった驚きがあると思います。一つずつの動作がスムーズになると、段取りが良くなり、料理の時間がさらに楽しくなるはずです」
渡辺有子料理家
東京都生まれ。料理家のアシスタントを経て独立。2015年料理教室「FOOD FOR THOUGHT」をスタート。東京・代々木上原と西荻窪に同名ショップも営む。研ぎ澄まされた審美眼に基づいたライフスタイルも人気。
photo : Kohei Yamamoto text : Mariko Uramoto edit : Wakako Miyake