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「コレット・ウシャールさんときものの新しい顔」。 西谷真理子July 19, 2018

2018.07.19

「コレット・ウシャールさんときものの新しい顔」。

ヨーロッパの舞台衣装デザイナーとして活躍するかたわら、京都の「地点」という劇団のために、衣装をデザインしているベルギー人のコレット・ウシャールさん。ふだんはブリュッセルに住んでいるが、地点の新作の衣装を担当するときには、京都に滞在して7人の俳優のために衣装を製作し、舞台の初日を見届けて帰って行く。コレットさんは、きものが好きで、きものについて深く考え、きものの本質をつかんでいる。古いきものをどこかから見つけて来ては、巧妙に解体して「地点」の衣装に使う。かと思うと、ユニクロの安い服を使って、チェーホフの「三人姉妹」の衣装を仕立ててしまったりする。既存の戯曲を自在に変容させる地点の三浦基さんの演出手法と、コレットさんの衣装の仕立て方とは、「脱構築」と呼びたい共通点がある。彼女の、日本人にはなかなか真似のできない、きものをリメークするセンスについて京都の「ひなや」のオーナーの伊豆蔵直人さんに話したら、なんと、伊豆蔵さんは、ひなやが扱うヴィンテージきもののプロモーションビデオ(下の「ひなや」をクリック)にコレットさんと地点の俳優たちをキャスティングしてしまった。上の地点の作品「忘れる日本人」の舞台と、動画の中で俳優たちがきものと戯れる様子とを見て、きものの広がりを感じてほしい。リンクの中にはコレットさんのインタビューもあるので、こちらもどうぞ。普段は、ヨウジヤマモトをすてきに着こなす女性なのである。

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神奈川芸術劇場(KAAT)で6月に上演された地点公演「忘れる日本人」より。写真提供:地点

編集者 西谷 真理子

にしたに・まりこ/『装苑』『ハイファッション』の副編集長を経て、京都精華大学客員教授。編著に『ファッションは語りはじめた』『相対性コム デ ギャルソン』が。

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