MUSIC 心地よい音楽を。

DJ、音楽プロデューサー松浦俊夫さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.3October 17, 2025

October.17 – October.23, 2025

Saturday Morning

プロデューサー、シンガーermhoiさんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.4
Title.
Warm Running Sunlight
Artist.
The Necks
海面に映る朝日が、ゆるやかに揺れている。

オーストラリア・シドニーを拠点とする前衛ジャズトリオ、ザ・ネックス。活動39年目にして発表された通算20作目のニューアルバム 『DISQUIET』 は、3時間におよぶ4つの大作で構成されている。それは実験音楽であり、アンビエントであり、そしてジャズでもある。

アルバムを締めくくるこの曲は、細やかなリズムとピアノの響きが溶け合い、夜明けの光が静かに広がっていくようだ。没入感あふれるサウンドスケープは、深く聴き入ることもできるし、朝の支度をしながら流しても、空間の中に音が静かに息づいているのを感じられる。

唯一無二のアンサンブルが、時間と空間の境界をゆるやかに溶かしていく。

そして気づけば、音の余韻の中で、朝はすでに始まっている。

アルバム『Disquiet』収録。

Sunday Night

プロデューサー、シンガーermhoiさんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.2
Title.
Coração
Artist.
Egberto Gismonti
1978年に発表された、エグベルト・ジスモンチの〈ECM〉第2作。

タイトルは真昼の太陽を掲げながらも、その音には夜を思わせる静けさが漂っている。ジャズ、民俗音楽、そして即興の実験的要素が有機的に溶け合い、アマゾンのスピリットを宿した、光と影のあわいに揺らめく音の風景を描き出している。アルバム中盤に収められたソロピアノ曲「Coração」は、その静謐の核心にある。

ピアノの響きが闇の中でゆっくりと広がり、やがて旋律はその奥へと静かに消えていく。まるで夜の底で、心そのものが小さく呼吸しているかのように。連載第1回で紹介したエルメート・パスコアールと並び、ジスモンチは私の音楽的な“根”の部分で、深い影響を与えてくれたアーティストのひとりでもある。

アルバム『Sol Do Meio Dia』収録。


DJ、音楽プロデューサー 松浦俊夫

松浦俊夫
1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成。5作のフルアルバムを世界32ヶ国で発表し高い評価を得る。02年のソロ転向後も国内外のクラブやフェスティバルでDJとして活躍。またイベントのプロデュースやホテル、インターナショナル・ブランド、星付き飲食店など、高感度なライフスタイル・スポットの音楽監修を手掛ける。13年、現在進行形のジャズを発信するプロジェクトHEXを始動させ、〈Blue Note Records〉からアルバム『HEX』をリリース。18年、イギリスの若手ミュージシャンらをフィーチャーした新プロジェクト、TOSHIO MATSUURA GROUPのアルバムをワールドワイドリリース。24年、同作品がイギリスの〈Brownswood Recordings〉よりアナログにて再リリース。「TOKYO MOON」(interfm 金曜 23:00) 好評オンエア中。

instagram.com/toshiomatsuura

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