MUSIC 心地よい音楽を。

今月の選曲家 山本勇樹January 08, 2016

Jan. 8 – Jan. 14, 2016

Saturday Morning

M_02
Title.
Current Carry
Artist.
Vetiver
2015年に一番聴いたアルバムといったら大げさかもしれませんが、それでもベスト5には入るのは間違いないです。なかでもこの「Current Carry」は、ほのぼのした雰囲気で休日の朝によく似合うと思います。ヴェティヴァーはアンディ・キャビックというシンガー・ソングライターを中心としたアメリカのバンドで、決して有名とはいえませんが、僕のまわりでは熱狂的なファンが多い。2013年にデヴェンドラ・バンハートと一緒に来日した際は満を持して観に行きましたが、まるで70年代のシンガー・ソングライターが目の前にいるようなサイケデリックな風貌に魅了されました。とはいえ、DJ的なクラブ・サウンド以降のセンスも感じられ、他にはない希有でエヴァーグリーンな音楽であることもたしかです。
アルバム『Complete Strangers』収録

Sunday Night

N_02
Title.
Stay Awake
Artist.
The Innocence Mission
静かな夜には穏やかな音楽を。イノセンス・ミッションはペンシルベニア州を拠点に夫婦で活動しているバンドです。「Stay Awake」といえば映画『メリー・ポピンズ』の劇中歌としてよく知られていますが、こちらのバージョンもそのシーンを思わせる愛らしい一曲です。少女の面影を残した歌声と控えめでありながら温もりあふれる伴奏には、ハンドメイドのような手触りがあります。子どもの頃に耳にした懐かしいメロディが記憶の奥のしまいこんだ風景を呼び起こします。この曲は昨年、彼らのキャリアを振り返りながら大好きな曲を集めて編んだ『The Innocence Mission For Quiet Corner』にも、もちろん収録しました。そしてアートワークはボーカルのカレン・ペリスによる描きおろしです。
アルバム『The Innocence Mission For Quiet Corner』収録

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

andpremium.jp/book/music-2020


Quiet Corner 山本 勇樹

HMV本部でワールド/ジャズを統括後、現在は〈HMV&BOOKS TOKYO〉で音楽バイヤーを担当。多数のCDの選曲やライナー・ノーツを手がけ、2010年より音楽文筆家の吉本宏氏と共に〈bar buenos aires〉を主宰しCDの制作やライブの企画を行う。2014年にディスクガイド『Quiet Corner』(シンコーミュージック)を刊行。またUSEN550にて同チャンネルの選曲も手掛ける。2015年には文具メーカー〈DELFONICS〉とコラボレーションしてコンピレーションを発表。

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