MUSIC 心地よい音楽を。

今月の選曲家 中島ノブユキDecember 16, 2016

December.16 – December.22, 2016

Saturday Morning

Title.
Snow Fall
Artist.
Claude Thornhill
そういえば今年は11月の東京に雪が降った。ならばまだまだ雪の気配のない12月の中旬にクロード・ソーンヒルのこんな曲を聴いてみたくなる。甘くそして捕捉しがたい響きを纏ったこの小曲に思いがけない新鮮なサウンドを随所に聴くことが出来る。芳醇な響き。暖かな真綿に包まるような……。この曲を聴くと不思議と静かな気持ちになる。窓の外で子供たちの雪にはしゃぐ風景。新たな冬の到来とともに一年という緩やかな周期を思う静かな感情。
『Claude Thornhill & His Orchestra 1942-1953』収録。

Sunday Night

Title.
Mondsee Variations I
Artist.
Paul Bley
その美しい白黒のジャケットのひんやりとした空気の感触からか、何故かこのアルバムが冬にちなんだアルバムのような気がしていた。ポール・ブレイ、彼は今年の初めに死んだのだが、生前一度だけ会った事がある。それはボストンで、しかもそれは小さなピアノのレッスン室でのこと。二十歳代前半の私は彼のもとでピアノを習いたくて直接会いに行ったのだ。彼は窓辺に座って煙草をふかし「何か弾いてよ」と言った。私は何か稚拙なものを即興と称して弾いた。終わると「じゃあ僕も何か弾くよ」と言って真の即興と言える何かを弾いた。この曲を聴き返すとその時の耳の記憶がよみがえる。
『Solo In Mondsee』収録。
&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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作曲家、ピアニスト 中島 ノブユキ

ソロアルバム『エテパルマ』『メランコリア』『クレール・オブスキュア』『散りゆく花』等発表。各地でピアノソロや室内楽編成で公演を行う。NHK大河ドラマ「八重の桜」や「神様のボート」等のドラマ、映画『人間失格』『悼む人』の音楽を担当。菊地成孔・ペペトルメントアスカラール、畠山美由紀らのアルバムやコンサートで楽曲提供及び編曲を担当。リミックスワークとして中島自身のリミックスによる「Thinking of You」がホセ・パディーヤのコンピレーションに収録、全世界発売された。また2011年よりジェーン・バーキン ワールドツアー「Via Japan」(27ヵ国 約70数公演)の音楽監督を務めた。2016年より再びジェーン・バーキン ワールドツアー「GAINSBOURG SYMPHONIQUE」の音楽監督/オーケストラ編曲/ピアニストを務め世界各地で公演。またそのアルバムは2017年初春、世界発売される。自身の音楽レーベル SOTTO を2015年設立。

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