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Music土曜の朝と日曜の夜の音楽。

俳優 中嶋朋子


October 18, 2019 土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/中嶋朋子 vol.3

October.18 – October.24, 2019

Saturday Morning

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Title.
ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58 第3楽章:Largo
Artist.
Maria João Pires
裸足の足先だけで踊る。離れて立つ男女2人の足が、ピアノの音と共に、近づき、女の小さな足が、男の力強く若々しい足先にフワリと乗る。2人はそのまま、踊り続ける。男の足先は愛おしそうに、女の小さな足を乗せ、落とさないように、ステップを踏む。ゆったりと。
舞台でのワンシーン。足先だけの、美しすぎるラブシーン。観客には、マリア・ジョアン・ピリスのピアノの旋律と、まるで映画のクローズアップのように、男女2人の足先だけが眩ゆい光の中、浮かび上がる。美しい旋律に撫でられ、満たされた朝を迎えた2人のきらめき。あんな美しい瞬間を演じられたことは、私の宝物。この曲をきらめく朝のために。
アルバム『Chopin』収録。

Sunday Night

Title.
Ricky’s Theme
Artist.
Beastie Boys
秋の夜、あえて、静かに考えを巡らせるのではなく、音や細胞のうねるがまま、彼らの生み出すグルーヴに身を委ねて、軽やかなギフトを掴みにいく。少しオーバーヒート気味の頭にも、心地よい冷ややかさが、正気を取り戻させてくれる。
彼らとの時代は、熱かった。さまざまなムーブメントが起こり、若者は眼を開いていった。ビースティが見せてくれた世界は、最高に格好よく、最高の真実だった。
どこからともなく、自分も知らなかった、秘められた力がやって来てくれるような、静かなる高揚感。真実は軽やかに見るもの。
アルバム『The In Sound From Way Out !』収録。




『&Premium』特別編集
『&Music/土曜の朝と日曜の夜の音楽』 好評発売中。

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ミュージシャンやクリエイター、写真家など、音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場。 土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする連載が、初めて一冊にまとまりました。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全204曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。 詳しくはこちら


October 11, 2019 土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/中嶋朋子 vol.2

October.11 – October.17, 2019

Saturday Morning

Title.
La Wally
Artist.
Vladimir Cosma
潔くなりたい。覚悟を持って。自分として立っていたい。日常の戦いは、ちょっと後ろに追いやって、深く息を吸って、本当の自分の声だけをあげてみる。このアリアを唄うディーバは、自分の声を閉じ込めたりはしない。映画『Diva』のサスペンスは、この歌姫が音源を残さず、ライブでしか唄わないことから始まる。自分の信じるものを貫き通す、確かな声。
少し優しい青になった空を見上げ、“力強く・美しい瞬間”というギフトを、自分自身に贈ってみる朝にしたい。
アルバム『Diva (Original Soundtrack)』収録。

Sunday Night

Title.
Lonely Rainbows
Artist.
Vanessa Paradis
愛は許すこと。甘い気持ちは全てを許すモチベーションになり得る。馴れ合いや、触れ合いも心地よいけれど、それって少し、快適な距離すぎる。本当はもっと、ずっと、隔たりなど感じないほどに…。そこにあるものを、あるがまま——ただ在るようでいたい。そう、願わくば、どんな人との繋がりだって。
ヴァネッサの甘い声、レニー・クラヴィッツの甘すぎる歌詞。纏う空気までもが蜜のようになる。なんだか無理に羽ばたかなくても、その空気の密度に漂えばいい、そんな気になる。愛とは、そんなもの。すべてに浮力を与えてくれる。これは、恋するということだけの特権ではない。愛とは、そんなもの。
あの人もこの人も、そして、昨日の私も、明日の私も、許してあげよう。
アルバム『Vanessa Paradis』収録。




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October 04, 2019 土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/中嶋朋子 vol.1

October.03 – October.10, 2019

Saturday Morning

Title.
Hang on St. Christopher
Artist.
Tom Waits
少し攻撃的な自分にさえ、抗うことを手放させてくれる。やってくるのは心地よさ。ヒリヒリとした夏の残り香がある時なんか、なおさら。毒を持って毒を制す——そんな感じで。
トム・ウェイツは言う。ウェイツという名を名乗る人々のルーツには“音楽を奏で時を知らせる”役割があったと。本当かどうかはわからないけど、そうなのだとしたら、ジリジリと焦げつくようだった、夏の熱を冷ませない私に、巡るべき“時”を告げてもらおう。
彼の歌声は夜が似合うけど、あえて朝に。この曲と共に「私はワタシなんだ!」と突き進むのもいい。時は自分で創り出すものなのかもしれない。
アルバム『Franks Wild Years』収録。

Sunday Night

Title.
Cancion Mixteca
Artist.
Ry Cooder
優しさと哀しみ、ほんのりとした甘やかさに包まれたい。ちょっと遠くなってしまった思い出や、帰れない場所、帰れない時を、優しく、そっと手を重ねて掬いあげる。いつもなら遅い朝によく聞く。ただ秋だから、虫の音と共に、薄紙を剥がすように、何かが浄化される——癒しの夜として。
映画『パリ、テキサス』のナスターシャ・キンスキーの深い瞳と、鮮やかなピンクのニットワンピース。十代の頃、初めて会った樹木希林さんに、「あなたナスターシャ・キンスキーに似てるから、キンスキー中嶋って呼ぶわ」と言われて心踊った。素敵な人からの粋なひとこと。
手を伸ばすばかりのノスタルジー。この曲に寄り添ってもらうしかない。
アルバム『Paris, Texas (Original Motion Picture Soundtrack)』収録。




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俳優 中嶋朋子

1971年東京都生まれ。映画、舞台、テレビドラマを中心に活動。パーソナリティーを務めるTBSラジオ『ラジオシアター〜文学の扉』では、小説の名作から1冊の本を選び、その中の名シーンを毎回ラジオドラマ化。フランスの劇作家ヤスミナ・レザによる4人芝居の舞台『正しいオトナたち』(https://www.tadashiiotonatachi.com/)、劇団た組『誰にも知られず死ぬ朝』(https://takumi.themedia.jp/posts/6778540)が待機中。ナレーションを担当する宇宙や地球にまつわる謎を1つずつ解き明かしていく番組、BSプレミアム『コズミック フロント☆NEXT』が毎週木曜22時に放送中。