BOOK 本と言葉。
10代のときに、私の生き方を変えた本。『奇蹟』/東京都・府中市『マルジナリア書店』 が届けるベターライフブックス。February 05, 2026
This Week Theme10代のときに、私の生き方を変えた本。
Book of the Week『奇蹟』 中上健次 著(朝日新聞社、現在は河出文庫から出版)

命が大事、とみんないうけれど。世界的に見れば恵まれた社会環境、でも地下鉄サリン事件や連続児童殺傷事件など大きな事件が頻発していた’90年代日本の生活を「終わりなき日常」と名付けた研究者もいた。困難な国や地域の子どものように過酷ではないけれど、経済は停滞して就職氷河期、先行きの不安ばかりが募り、生きるということの輪郭が滲んでいた10代に鮮烈な色を投げかけたのが『奇蹟』だった。
和歌山県新宮市の路地という土地と、そこに生きる仏の因果を背負う一統の血脈の花として煌めくタイチの生涯を描き、世界的な評価を得る傑作小説。
その土地や因業は私とは関わりのないものだったけれど、中上健次の描く世界と人間はなんとも壮大で、なんともちっぽけで、私如きが知ったかぶった自我と悩みをこねくりまわしたところでそんなことは意味がない、と思えた。ただ、生きて走れ。タイチに、中上に背中をバンと叩かれた。
※写真は1989年朝日新聞社刊行の函入り初版。菊地信義による金色の小鳥、光を模した装幀が美しい。
BOOKSHOP マルジナリア書店byよはく舎

店主の小林えみさんが、京王線とJR南武線が交差する分倍河原(ぶばいがわら)駅の目の前に、2021年にオープン。10年以上本屋のなかった町に、人と本が出合う、交差点のような場所を作った。「やさしくて、うつくしいもの。ときどき、するどいもの」そうした本の選書を心がけ、独自の視点を届けている。店内では〈夕凪文具店〉の雑貨も販売。
住所:東京都府中市片町2-21-9 ハートワンプラザ3階
営業時間:13:00〜19:00
定休日:第二・第四火曜と毎週水曜






















