MUSIC 心地よい音楽を。

ミュージシャン・Lil Summer さんが選ぶ土曜の朝と日曜の夜の音楽。vol.1July 07, 2023

July.07 – July.13, 2023

Saturday Morning

Title.
Sweet / I Thought You Wanted To Dance
Artist.
Tyler, the Creator feat. Brent Faiyaz & Fana Hues
「7月の土曜の朝」と聞いて思い浮かんだのは、少し寝坊して暑さで目が覚めて、クーラーをつけて冷たい飲み物を作って、好きな音楽をかけて小躍りするような、休日がスタートする場面です。まさにそんな情景にピッタリだと思ってこの曲を選びました。
この曲はタイトルの通り2部構成になっています。前半はBrent Faiyazのパート。彼の音楽は陰陽で言うと「陰」の雰囲気をまとっている印象だったのですが、「陽」なイメージのTyler, the Creatorのトラックと見事に融合していて面白いです。独特でシリアスで官能的な歌声の持ち主の彼が、普段よりも少し軽やかに、甘い詞をキュートなメロディに乗せて歌っているところが最高です。
後半はFana HuesとTyler, the Creatorによるポップレゲエのパートがとても心地良いです。恋人との間にすれ違いが生じて振られてしまったというような、少し悲しい内容の歌詞があたたかいレゲエ調のトラックに乗っているのも推したい要素です。まさに、小躍りしながら週末の幕開けをお祝いするのに完璧な一曲です。
アルバム『Call Me If You Get Lost』収録。

Sunday Night

Title.
Invitation
Artist.
Cal Tjader
この曲は、死に際に流れていて欲しいくらいに好きな曲なのですが、初めて聴いたときは何とも表現し難い感情に襲われました。ラテンのリズムの温かさに、響き渡るビブラフォンの心地よさ。ラテン音楽といえば陽気な気持ちにさせてくれるものが多くて、そういったものもとても大好きなのですが、この曲には物寂しさを感じます。日が沈む砂漠に1人きりで佇んでいて、とんでもなく絶望的な状況であるにも関わらず、落ちてゆく夕日や徐々に浮かんでくる星空があまりにも美しくて見入ってしまう、というような、想像の膨らむ曲です。どことなく世紀末的な印象を受けるのですが、その寂しさやちょっとした絶望感が、週末の終わりにフィットする気がします。楽しかった週末の余韻に浸りながら、お香でも焚いてゆったり聴きたい1曲です。
アルバム『Latin Kick』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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シンガーソングライター 、 DJ Lil Summer

福岡県出身のシンガーソングライター / DJ 。Aaliyah、Erykah Badu、J Dillaなどのアーティストに影響を受け、Alternative R&BやNeo Soulなどのジャンルを中心に作曲、選曲している。2023年3月にはファーストEP『Rojo』をリリース。

instagram.com/_lilsummer_

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