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春夏秋冬、花を飾るときにやらかしがちなこと。May 01, 2022
切り花を飾ることは難しいことではないものの、花によっては例外があることも。いつもと同じ飾り方なのに不調になったり、長持ちさせるチャンスを逃していたり、やらかしてしまいがちなNGな花の扱い方について、専門家が季節ごとにレクチャー。
基本と例外を知って、
季節に合わせた飾り方を。
せっかく買った花々だから、できるだけ長く健康に飾りたいもの。まずは切り花を扱う上での原則を、花屋『ル・ベスべ』の店長、木津谷優子さんに教えてもらった。
「買ってきた花を花瓶に移し替えるところから説明しましょう。まず、花瓶にはたっぷり水を入れることが基本。水が切れないよう、花瓶の半分以上入れるといいですよ。花を挿したら、次は置き場所ですね。おすすめは日陰の涼しいところ。くれぐれも直射日光に当てないでください。水が濁って花が弱ってしまうので、高温多湿の環境は厳禁。また、花には刺激が強すぎるので、冷暖房や扇風機の風が当たる場所も避けましょう。飾った後もこまめに水替えして、花瓶の中は常に清潔に」
これらを押さえれば大抵の切り花は上手に飾れる。ただし、例外もあり、季節によって気をつけたいことも異なる。この違いまでマスターできれば、もう、花をダメにすることもなさそうだ。
たっぷりの水に浸けて飾る。
ここ数年、花屋でよく見かけるようになった球根付きの花。チューリップやヒヤシンスなど馴染みのあるものばかりだから、切り花同様、たっぷり水を入れた花瓶に挿そう。「"水はたっぷり"が基本なのですが、これは例外。球根付きの花を茎まで水に浸けると、茎や球根が腐りやすくなってしまうのです。だから球根の先から伸びる根だけ水に触れていればOK。皿に薄く水を張って飾ることもできますよ」
調子が良さそうだから暖かい場所に飾ろう。
春といえばチューリップ。気温が上がるにつれてぐんぐん蕾がふくらむから、暖かい窓辺に飾ってみると快調に開花。しかしそのまま置いていたら、1週間と持たずに開ききって散ってしまった。「チューリップやアネモネといった花は、20℃ほどの気温で勢いよく花開きます。とはいえ長持ちさせたいなら、暖かい環境に置きっぱなしではダメ。花が開きかけたタイミングで涼しい場所に移動させましょう」
茎がしっかり呼吸している証拠かな。
よく見たら、花瓶の口の内側に水滴が。夏らしくぐんぐん水を吸って、茎も呼吸しているのだろうか。水量が減らないように気をつけよう。「花瓶の内側が曇るのは茎が呼吸しているからではなく、花瓶の中の温度と湿度管理ができておらず、蒸れている証し。そのまま放置すると茎が腐ってしまうこともあります。花瓶に挿す本数を減らすか、口の大きな花瓶に移し替えて風通しをよくしてあげましょう」
暑いから花瓶の水量を増やして飾ろう。
夏の気持ちよさを象徴するような花、ヒマワリ。いつも以上にたっぷり水をあげれば涼を感じられてますます素敵だ。あれ、頭が垂れてきたけれど、花が重たいからかな? 「これもまた、"水はたっぷり"の例外のひとつ。ヒマワリやガーベラのように、うっすら毛がある茎は大量の水に浸けると腐りやすいのです。夏は水の濁りにも気をつけたいので『水量は少なめに、水替えはこまめに』と意識しましょう」
元気がなさそうだから捨ててしまおう。
ワレモコウの花が開いてきたと思ったら、茎に近い部分から茶色に変わってしまった。乾燥してきた空気にダメージを受けたのかも。残念だけど、捨ててしまうか……。「秋を告げるワレモコウの花は茶色くなりやすいのですが、実は特別強く傷んでいるわけではありません。まだまだ飾り続けてもいいですし、この花や野バラの実など、秋に出回る品種はドライフラワーまで楽しめるものも多いですよ」
重くて水替えが大変だから、水量は少なめで。
種類によっては紅葉も楽しめる枝ものは、秋らしさが感じられていいものだ。大ぶりなものを買ってみたけれど、花瓶も大型になるから水替えに一苦労。水は少なめでいいか。「枝ものは丈夫だと思っている方も少なくないようですが、実は水の消費が激しいんです。重たくて水替えも大変ではあるのですが、大きな花瓶でもたっぷりと水を入れて、不足していないかこまめに見てあげてください」
朝晩くらいは暖房の近くへ移動してみる。
10℃を下回る冬の寒さは花にもこたえそう。花にしても涼しいというより寒いのでは……。直射日光は避けたほうがいいから、ストーブの近くに飾ってみよう。「切り花は、暖かさと乾燥のどちらも苦手です。だから暖房付近は過酷な環境。直射日光が当たらない窓辺など、冬でも多少『寒いかな?』と感じる場所でOK。また、冬は空気が乾燥して想像以上に水が減るので注意しましょう」
そのままドアに掛けて飾っておこう。
クリスマスリースを飾れる時季はほんの一瞬。すぐ外してしまうのも寂しいし、丈夫な気もするから、クリスマスが終わってもしばらく玄関先に掛けておこう。「気持ちはわかりますが、それはおすすめできません。ドアの開閉による風や木枯らしは、草花には刺激が強すぎるのです。それにリースやスワッグに使われるドライの草花も意外と脆く崩れやすい。できるだけ早く室内に入れましょう」
illustration : Hiroko Shono text : Ryota Mukai
*2022年4月20日発売『&Premium』6月号「花を飾る、緑と暮らす。」より。
『ル・ベスベ』店長 木津谷 優子
2015年より店長を務め、本誌連載「&days」では「今月の花」のアレンジメントも担当している。
▽東京都港区南青山7-9-3 ☎03−5469−5438 11時〜17時 火休