Music

土曜の朝と日曜の夜の音楽。 今月の選曲家/小池アミイゴ vol.2March 13, 2020

March.13 – March.19, 2020

Saturday Morning

Title.
夜明け
Artist.
baobab
障子に揺れる光で目が覚めた。再会の喜び酒の残る体に冷たい水を放り込み、築150年と言われる森の中の一軒家を出る。木々のサワサワが朝日をかき混ぜ、森のあちらこちらを輝かせている。「あら早いわね」背中で家主の声を聞く。振り返ると鍬を手渡された。「朝ごはんが美味しくなるわよ」。そう言われたボクは畑に出て、1時間ほど新鮮な土の匂いにまみれる。森に暮らし中世の古楽器を作り、生きるのに必要なだけの食べ物と歌を作り生きる家族との、今やボクの当たり前になった土曜日の朝。ボクたちは明日、生まれてから今に至る時間だけを鳴らす音楽会を、この森の中で創るのだ。
アルバム『folk』収録。

Sunday Night

ルビンシュタイン
Title.
Andante Spianato And Grand Polonaise In E-Flat, Op.22

Artist.
Artur Rubinstein
日曜の夜まで絡まった1週間のモヤモヤをほぐさなくちゃと、8分の6拍子のショパンのピアノ曲と共にベッドに入った。研ぎ澄まされた技術で鳴らされる輪郭の確かな音は、思いがけぬ揺れの中で連なり、それはそよ風や小川のせせらぎ、小鳥のさえずりと同じく、無音であること以上の静けさを感じさせてくれる。そのメロディを追いかける意識は、揺れとモヤモヤの接点で2度と出会うことのない風景に出会い、心地良い疲労感を得て、明日生きるのに足るものだけを残し、日曜の夜に吸い込まれてゆくのだ。
アルバム『Arthur Rubinstein Classic Apremidi Pour Soiree』収録。



&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

&Music / 土曜の朝と日曜の夜の音楽 Ⅱ

音楽好きの“選曲家”たちが月替わりで登場し、土曜の朝と日曜の夜に聴きたい曲を毎週それぞれ1曲ずつセレクトする人気連載をまとめた「&Music」シリーズの第2弾。 23人の選曲家が選んだ、週末を心地よく過ごすための音楽、全200曲。 本書のためだけにまとめた、収録作品のディスクガイド付き。

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イラストレーター 小池アミイゴ

群馬県生まれ。長澤節主催のセツモードセミナーで絵と生き方を学ぶ。フリーのイラストレーターとして1988年から活動スタート。 書籍や雑誌、広告等の仕事に加え、音楽家のアートワークも手がける。1990年代はいくつかのバンドの鍵盤奏者として活動する傍、CLUB DJとしてイベントを主催、clammbonやハナレグミなど多くのアーティストの実験現場として機能させる。2000年代はローカルをテーマに日本各地で暮らす人とライブイベントやワークショップ、展覧会を開催。2011年3月11日以降「東日本」をテーマに絵を描くことをライフワークにしている。

yakuin-records.com/amigos

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